ムラサキ__《N.Ren》 (ページ29)

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your side

「今すぐ男の連絡先消してくれない？」

あの日、突然勇太からそう言われた。

私は、素直に従った。
元々そんなに異性の連絡先は持っていなかったけれど、
永瀬くんのところで、指が止まった。

消してなかったら、怒られるかな。
スマホ、見られるかも。

素直に従えば、勇太と幸せになれるのかな。

結局、私は連絡先を消した。
決心するには、こうするのが1番だと思ったから。

次の日から、勇太は明らかに以前とは違っていた。

これまでの事を直ぐに謝ってくれて、
毎日私を迎えに来るし、送ってくれるし
休み時間も隣に来る。

ほかの女の子の連絡先は全部消したと、
私にスマホを見せてくれたりもした。

「大好き、大好きだよA」

「俺だけのAだから」

私が望んでいた、優しい勇太。
私のことを愛してくれている勇太。

全て、自分の願っていた通りになった。

なのに、なのに。

どうして、
少しだけ、あのままでよかったなんて
思っている自分がいるんだろう。

辛いことばかりだったのに、
そう思っているんだろう。

そんなことをグルグル考えながら、
勇太と一緒に帰っていた時だった。

「…A?聞いてる？」

「え、あっ、ごめんなさい、ちょっと考えごとしてた…」

「……、」

怒らせてしまったと思い、
勇太の方を向いて謝ろうとした時

急に肩を抱き寄せられて、
勇太が顔を近づけて来たのがわかった。

あ、キスされる。

私は咄嗟に、無意識に
目をつぶって顔を背けていた。

「……んだよ、それ」

私の反応に、
勇太は私の肩から手を離して

「…なんでなんだよ、」

そう言って、私を置いて走ってどこかへ行ってしまった。

私は混乱していた。
私、今どうして勇太を拒んでしまったんだろう…

自分の行動が、分からなかった。

また、怒らせてしまった。