ムラサキ__《N.Ren》 (ページ20)

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ムラサキ__20 ページ20

神宮寺side

「っ……くそ！！！！！！」

俺は階段の壁を殴りつけていた。

………イライラする。本当にイライラする。

永瀬廉の顔と言葉が、俺をイラつかせる。
あの目も、ハッキリした物言いも、全てイライラする。

「そんな簡単に奪われてたまるかよ……」

イライラする気持ちを抑えながら、階段を降りた。

「あ、勇太…！！」

帰らせたはずの女が、何故か階段の下で待っていた。

「ごめん、どうしても会いたくって…一緒に帰ろ？今日家親いないんだァ」

甘えた声を出して、俺の腕に絡みついてくる。

「………せよ」

「え？」

「離せよ！！！！！！」

俺は女の手を振りほどいた。

「お前にもう用はねえんだよ、分かったらとっとと失せろ！二度と俺に関わんな！！！」

「……え？？…なんで？あんなに抱きしめてくれたじゃん、どうして急にそんなこと言うの………！？！」

俺の怒声に、女は泣き出していた。

「……A以外の女、名前も覚えてねえよ。」

俺は女に向かってそう吐き捨てるように言った。

「………なにそれ…さいっっってい……！」

女は泣きながらどこかへ走っていった。

「………彼女持ちの男って分かってくせに、今更最低って気づいたのかよ」

あまりに馬鹿らしくて笑ってしまった。

やっぱり、A以外の女はくだらない。
突き放したら、すぐに泣いて喚き出す。

「Aは俺のもんだ……」

Aは俺だけを見ていればいい。
俺を好きでいればいい。
俺を、好きでいて欲しい。