ムラサキ__《N.Ren》 (ページ15)

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your side

電話を切り、リビングへ向かう。

「あら、A。帰ってたの？ご飯にしましょ」

「…うん」

両親と3人で夕飯を食べる。

「母さんのつくる飯は本当に美味いなぁ！」

ニコニコしながらご飯を食べる父。

私と勇太の婚約が決まって会社の経営が安定したおかげか、父の機嫌は随分と良くなり、家族の仲が本当に良くなった。

「ああ、そうだA。神宮寺社長の息子さんのことだけど、」

「…勇太がどうかしたの？」

先程の電話のせいか、心臓がドキッとした。

「社長がすごくお前のことを気に入ってくれていてね。うちとの取引を更に優遇してくれているんだ。本当に助かるよ。」

嬉しそうな父。

……助かる、か。

お父さん、お母さん
私あの人と結婚したくないです。
あの人浮気してます。

なんて、言えるはずもないし、
言ったところで、気のせいだーとか、
それくらい許してあげろとか、
私が責められそうだから。

「これからも失礼のないように、よろしく頼むよ」

「……わかった、お父さん」

ああ、やっぱり素直な私は必要ない。

心を閉ざしたその時、スマホに通知が入った。

永瀬廉 : よ、俺です。また空見よな

永瀬くんからの短いメッセージ。
たった1行なのに、

今の自分には、あたたかすぎた。