ムラサキ__《N.Ren》 (ページ38)

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ムラサキ__38 ページ38

チャリを2人乗りして、
俺たちが辿り着いたのは、海辺だった。

チャリを止めて、俺たちは砂浜を歩いた。

海を眺めていると
来週、この海の先にAが行ってしまうんだって、
改めて実感してしまって。

横で海を眺めているAの腕を掴んで、
引き寄せて、また抱きしめた。

Aが俺の所にいるって、
確かめたかった。

Aは、初めて会った時
俺に触られるのを拒否していたのに

今は、俺の腕の中に居て。

「……私、来週海外に連れていかれるみたいなんだ」

Aはポツリと言った。

ああ、やっぱり噂は本当だったのか。
俺の心に、現実は重くのしかかった。

だけど、今は2人でいるこの時間に浸っていたかった。

「もう、永瀬くんと会えなくなるのかなって思ったら、なんか凄く凄く嫌で、それで、家飛び出しちゃって、」

言わないで。
会えなくなるなんて、言わないで。
そんなこと、今は考えたくない。

凄く凄く嫌なんて、言わないで。
そんなこと言われたら、さらに好きだと思ってしまうから。

「とにかく、会いたかった、会いたかったの」

彼女の素直な言葉の連発に、俺は耐えられなくなって

「俺はここにおるし今会ってるやろ。そんな可愛いことばっか言わんでや。」

「だって本当に……」

思わず、言い返そうとするAにキスをして
言葉を遮った。

「んッ……………え、っ、え…？」

目をぱちくりさせて、
顔を真っ赤にする君と

実はAにキスをするのが初めてではないけれど
反応が見れたのは初めてで可愛くて仕方ない俺

慌てる君を他所に
俺はまた、キスをした。