地図が違う ページ5
急に一人になる。
しかしそれによってまた考える時間ができた。どうやら此処は日本ではないようだ。
俺が知る限りカタカナ表記の島は日本に存在しない。
では海外なのかと考えるが皆日本語を話していたのでそれもまた違うだろう。そして夢でもないのなら――――と、俺はある考えにたどり着く。
俺は俗にいうトリップをしたのではないのか――――と。
自分でもこの思考に驚いたがこうとしか考えられないのだ。別に今更だが頭がイったわけではない。
異世界トリップ―――。
簡単にいうと現実世界から別の次元の世界にワープすることだ。
俺は中学生時代そういう類の本を一回だけ読んだことがある。
主人公が不慮な事故で亡くなり異世界へトッリプして、そこで生活を送りながら日々成長していくストーリーだ。
友人に勧められ読んでみると、見知らぬ世界にいるのに、それをちゃんと受け入れる主人公の姿勢が素晴らしかった。
俺には多分できないな。と感想をいうと、友人から違う、そうじゃない、と言われた。
話がずれたが、今まさにこの状況はそれなのではないかということ。信じがたい話だが、今振り返ってみると納得してしまうところがいくつかあった。
この仮説はついに確信へと変わる。
「おぉ、待たせたな」
俺はバッと効果音が付きそうなぐらい地図に食いつく。
地図をみれば全く俺の知ってる地形はなかった。日本の姿は見当たらない。
知らない単語がたくさんあり本当にトリップをしてしまったのか…と愕然する。
そしてあることに気が付く。
俺、帰れなかったらどうしよう…。
今更そんなことを感じて、心臓がドクンドクンと音を立てる。嫌な汗も流れてきて、スー、と体がひえていくのを感じた。
「お前さん、大丈夫かね」
俺の顔色が悪いと指摘され、俺は慌てて「大丈夫です、心配ありません」と答えた。いや、実際には色々大丈夫ではないが余計な心配はかけられなかった。
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作者名：クジラ | 作成日時：2019年5月1日 15時
