先輩と私のお話【鬼滅の刃】 (ページ21)

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にじゅういちページ21

ピンポーンとチャイムが鳴る。中から顔を覗かせた宇髄先輩に荷物をひったくられた。

暖かい風が背中を押す。もう桜が咲く季節だ。ここに来るまでも所々、淡い桃色の花が見受けられた。

「おう、入れ入れ」

「お邪魔します...？」

「ただいまだろ」

「た、ただいま」

大学から程近いアパートの3階。玄関から見えるリビングは生活感が漂っている。自然と心拍数が上がる。先輩の服の裾をきゅっと掴んだ。

振り返った先輩に向かって言う。

「ありがとうございます」

何度目のお礼だろうか。何度同じ言葉を言っただろうか。これから、先輩と一緒に生きているのだ。決して根拠がある訳じゃないけど、幸せを信じていける。それくらいに好きなのだ、もう。

溺れてることなんて自覚済みだ。

「俺達はさ、色んなもん失ったまんまだったけど。もうそんなことどうでもいいよな」

「好きだよ、どうしようもなく」

「せんぱ...」

い、を発する前に口を手で塞がれる。そのまま覗き込むように顔を近付けてくる。反射で引いてしまいそうになる腰を引き寄せられた。

「名前で呼んでくれよ」

「でも、」

「卒業したんだし、良いだろ？」

見つめられて、何も言えなくなる。全身が熱を持っている。先輩が、近い。とうにキャパオーバーだ。

「う、ずいさん？」

「名前だ。下の名前」

「...あ、う...。...て、天元さん」

「よく出来ました」

唇に、何かが触れた。それがキスだと気付いたのは3秒後のこと。情けない声が口から漏れる。先輩はこちらをまた見つめてくる。明らかにその瞳は熱を孕んでいて。

「なあ、もう少し、」

「え...あ、はい...？」

思考回路がショートしている。何を言われたのか理解しないまま承諾してしまった。

今度は食むように。