じゅうよん ページ14
あのままベットの上で寝落ちしたらしく、目が覚めたら視界一面が宇髄先輩だった。びびった。
布団から抜け出そうとすると先輩の目が開く。
「あ、おはようございます」
「んあー...？おあよー」
まだ寝ぼけなまこで舌が回ってない、ぽやぽやとした状態のまま先輩は言った。立ち上がって伸びをした私の後頭部を見て、何かに気付いたようで、あ、と声を漏らす。
「そういや、髪の毛。切られっぱなしだな」
「言われれば確かにそうですね。どうしましょう」
切られたのは主に後ろの髪。掴まれてばつんとハサミで切られたため、不揃いなぱっつんになってしまっている。全体的な長さはボブくらいだろうか。
「よし、俺が揃えてやるよ」
「え」
思いがけない発言に体が固まる。がたいのいい宇髄先輩がハサミを持って髪の毛を切ってくれる姿を想像する。似合わない。
「なんだよ、不満か？」
「いえ...なんというか、奇抜な髪型になりそうだなと」
「失礼な後輩だな。こう見えて意外と繊細なんだぜ」
そこまで言うなら、と強気な先輩に折れる。まあ髪型なんて比較的どうでも良いし、おかしくなければいいだろう。
「そうと決まれば、早速始めるぞ」
「ちょ、待ってください！」
先輩は勢いよく起き上がるとあっという間に部屋を出ていってしまった。追いかけて部屋を出る。ここに来る時には気を失っていたため、周りの景色に見覚えがない。下手したら迷子だ。
「よし、じゃあこれ付けて座れ」
美容院で髪を切る時に羽織るビニールシートのようなものを手渡される。辿り着いたのは風呂場。ここにどうしてこんなものが有るのかは置いておこう。
向かいには大きな鏡が取り付けられていて、顔に負った傷が痛々しかった。先輩がハサミを取り出して後ろに座る。昨日の事が思い出されて反射的にびくりと反応してしまう。
それに気付いた先輩が優しく笑った。
「少し無神経過ぎたな。まだ辞めとくか？」
「大丈夫です。お願いします」
宇髄先輩なので、と心の中で付け加える。
先輩はもう一度ふわりと微笑むとハサミを持ち直した。じょきん、と見えないところから音が聞こえた。
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作者名：ぽてと | 作成日時：2019年12月7日 17時
