蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ8)

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敢えて乗り込んで。ページ8

翌日。
よく晴れた天気の良い今日、私は清隆と別れ1人で船内を散策していた。
途中何人かの人に遊ばないかと誘われたけれど、情報収集の方が優先的と判断したので断る。
遊ぶのは、この後でも出来るでしょ。
ウロウロしながら、見晴らしの良いレストランを覗く。
既に沢山の生徒達が席に座って、料理を楽しんでいた。
ふと、奥の方に座る生徒に目が行く。
見覚えがあった。
あれは確か、Aクラスの葛城君だ。
姿勢良くナイフらを使いこなすその姿は、傍から見るとまるで一家のご子息のようである。
特徴的なそのスキンヘッドが、余計に目立って見えた。
へぇ、厳つい見た目とは裏腹にマナーはなっているようね。
人は見かけによらない、とはよく言ったものだ。
そう考えていると、大声が響く。
あれ、3馬鹿と清隆が居る。
恐らく、よくあるチェーン店と同じように注文をしようと声を上げたのだろう。
案の定、周囲から白い目で見られている。
清隆、何であんなのと一緒に行動しちゃったかなぁ…
目をつけられてしまう、まだその時じゃないと言うのに。
沸点の低い須藤君が、Aクラスの男子生徒に掴みかかる。
見ていられない、と頭を抱えてその場を離れようとした。
だが、ふと思い直す。
目立ちたくないが、今ここで敢えて乗り込んで場を収めるのも1つの手だ。
表立って動かない清隆に代わりAクラスの人間とお近づきになるには、寧ろ良いチャンスかも知れない。
好都合だ、とほくそ笑む。
葛城君が何事か言って諌めているその場に、私も静かに乱入した。

『私からもごめんなさい、Aクラスさん。そして、この場に居る全ての皆さん。』
「…君は。」

葛城君は、突如として現れた私に微かに驚いたようだった。
私はニコリと笑い、葛城君と目を合わせる。
よろしくね、Aクラスさん。

『いきなり入ってごめんなさい、私はDクラスの旋毛風A。この度は、同じクラスの生徒達がご迷惑をおかけしてごめんなさい。』

深々と頭を下げ、周囲の人間にも同じようにする。
申し訳無さそうな困り顔も、忘れない。
葛城君は、私の態度に眉間の皺を少しだけ緩めた。

「…中には、マシな生徒も居るようだな。だが、君のような粛々とした生徒がまず手本を見せてやってはどうだ。今後もこのようなことが起こる度、君が謝っていては収集がつかないだろう。」
『あは…手厳しいね、葛城君。けれど、本当にその通り。私達も、もっとマナーを勉強するべきだった。周りの迷惑にならないように、ね。』