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SIDE 綾小路。 ページ6

「させる訳無いだろ。それに俺がそんなことをさせないことくらい、分かっているだろ。」

Aが滔々と俺の代わりになると言った瞬間から、俺の中の感情という感情が荒波となって胸の内で暴れ始めた。
何とか抑え込もうとしたが、俺の胸中など知らないようにAは笑っていた。
それを見て、抑える必要性を無くして解放させる。
本当はAに実力行使などしたくないが、今回で少し懲りてもらわなければ意味が無い。
かなり力加減をしながら、無防備な首筋を背後から狙って痛みを覚えさせる。
目を見開いて痛覚をこれでもかと刺激されたAの身体が、勢いでふらつく。
だが俺の想像通り、Aは意識を保っていた。
一般人なら、トラウマレベルの激痛の筈なんだが。
これで気絶しなかったのは、やはり訓練の賜物なのだろう。
欄干に押し付け、目前の暗闇に突き落とすように力を込める。
全身全霊のそれでは無いものの、加減は少ない方だ。
両手で肩を欄干に押し付けて、暴れようとする手足を胴体でもって固定する。
実力差や体格差も相まって、Aの抵抗は容易く捻じ伏せられた。
分かってくれ、A。
瞳孔が開き、俺に初めて恐怖を感じたらしいAに語りかける。

「もしAが俺の傍から離れてホワイトルームに勝手に戻るというのなら、俺は今ここでお前を殺す。」
『っ!?』

ヒュッと細い息が漏れた。

「俺の元から離れることは、決して許さない。お前はこれからも、俺の傍で生きろ。」
『き、よたか…』
「俺の代わりなんて以ての外だ。今後一切そんなことは考えるな、思考の一端にも置くな。」
『…』

俺の傍から離れ、またあんなところに戻されるくらいなら。
手の届かないところに行かせるくらいなら、いっそこの手で。
Aの細い首に、右手をかける。
握り潰せそうな程、華奢なそれ。
Aの顔色が、青く変わる。
本気だと、漸く分かったらしい。

「今決めろ、お前は賢い筈だ。」

今一度藻掻こうとするAを、更に力で押さえつける。
俺からすればこんな抵抗、無いに等しいくらいだ。

『清隆…分かった…!』
「…」
『う、嘘じゃない…!清隆から離れるなんて、私だって嫌だもの!だからお願い、そろそろ戻して!』
「…」

彼女の首を囲う右手にギリギリと力を込め続け、嘘を吐いたとて意味が無いことを再度通告する。
Aが、何度も大きく頷いた。
目の端に涙が光ったのを確認し、彼女の本気具合を確かめて解放した。

自由のために。→←怒り。



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沙羅(プロフ) - 橋本ー!!!!ありがとうございます!この小説に橋本と龍園が出てくるだけで最高にテンション上がります!これからも応援してます! (3月27日 1時) (レス) @page22 id: e669b9fbcc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年3月18日 18時

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