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疑ってかかって。 ページ49

相変わらず、やることなすこと全てが早い男だなぁ。
顎を摘んで考えていると、桔梗さんが伊吹さんの元へ向かう。
同じCクラスの人間だ、どうしたいのか興味があるのだろう。
しかし伊吹さんは、あんな奴らの顔なんて見たくない、と言って帰る素振りを見せなかった。
余程のことをされたのだろうか。
確かに顔を腫らしていたから、かなりの折檻を受けたのかも知れないけれど。
すると、須藤君が怪しむように伊吹さんに近づいた。
桔梗さんが宥めようとするが、須藤君は聞こうともしない。

「俺達に助けてもらってんだから、少しくらい協力しろよ!」
「誰も『助けてくれ』なんて頼んでない、アンタ達が勝手にやっただけ。」
「あぁ?」
「貴重なポイント無駄にして、馬鹿じゃないの?」
「んだと!?」
「殴りたきゃ殴れば?!」

ヒートアップする口論に、いよいよ須藤君がキレて手を出そうとする。
咄嗟に平田君が割り込み、何とか2人を引き剥がした。
伊吹さんは、気遣うように声を掛ける桔梗さんのことも鋭く睨みつけていた。
須藤君は彼女が離れていった後も、憤りを隠せないように苛立ったまま。
確かに、須藤君の言うことも一理ある。
交流が無いとは言えど、須藤君からすれば彼女はかつて自分を陥れようとしたクラスの人間。
疑ってかかって、当然である。
…だからって、あの言い方では憤然とされて仕方無いけれど。
各々が各々の気持ちを抱えたまま、眠りにつく。
私はどうも眠れなくて、皆が寝静まった頃合いを見計らって外へ出た。
暑い季節だが、やはり日が沈むと少し冷える。
私は両腕を擦りながら、川辺に座って息を吐いた。
ここで暫くぼーっとしていれば、勝手に眠気もやってくるだろう。
それまでは、ここで何もせず静かにしていよう。
腰を下ろした岩の冷たさで、私は何故か過去のことを思い出していた。







物心がついた時から、私はあの監獄の中に居た。
ホワイトルーム…人工的に天才を作り出す教育機関で、清隆の父親が運営しているものだ。
清隆とは、そこで出会った。
男女兼用の白い服を着て、毎日同じように問題を解いて1日を超える日々。
そんな中で、一際異質な存在だった彼。
初めて清隆を見た時から、私は彼に目を奪われた。
人工物の光を反射してキラキラと輝く、薄茶色の髪。
全てを映しているようで何も映さない、無機質で冷たい瞳。
弧を描いたことの無い、真一文字に引き結ばれた唇。
陶器のように、白い肌。
誰もが恐れ、重宝した天才。
それが、綾小路清隆。

敵いたい…なんて。→←両極端。



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沙羅(プロフ) - 橋本ー!!!!ありがとうございます!この小説に橋本と龍園が出てくるだけで最高にテンション上がります!これからも応援してます! (3月27日 1時) (レス) @page22 id: e669b9fbcc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年3月18日 18時

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