両極端。 ページ48
私は、こちらを見て説明役を頼んだ清隆に代わって鈴音さんに話す。
簡単な話なのだ、高円寺君がやったことと同じことをするだけ。
理由を無理矢理にでもつけてリタイアすれば、全員客船に戻されて夏休みを満喫出来る。
龍園君は元々、試験なんて受けるつもりが無かったのだろう。
文字通り自由に行動して良いのだ、失う可能性のあるポイントを予め使い切って、後は悠々自適に夏のバカンスを楽しむ…所謂、0ポイント作戦。
面白いわね、そんな発想の仕方もあったなんて。
それからは、比較的平和に過ぎた。
試験4日目に自主的に行っていた島の探索に着いてきた愛里さんを振り返ると、かなり辛そうながらも笑みを見せる愛里さんと目が合う。
清隆が好きなのだろうから彼と共に居れば良いのにと伝えたら、愛里さんは私と行動したいのだと言った。
いつの間に、そんなに懐かれていたのだろうか。
最初は旅行なんて憂鬱だったらしい愛里さんだが、今は来て良かったと思っているようだった。
良かったねと微笑むと、愛里さんは両手の指先でファインダーを作る。
愛里さんの目には、私はどう写っているのかしら。
夕方。
探索がてら再びCクラスの根城だった浜辺にやって来ると、そこにはBクラスの帆波さんと神崎君が居た。
そこは既に、藻抜けの殻。
私に合わせてね、と愛里さんに耳打ちする。
愛里さんの顔が、夕日のせいかギューンと赤く染まっていった。
「ありゃ〜、もう全然人が居ないね。」
「よく会うなA、お前も偵察か?」
『本当ね、神崎君。私達は適当に森を探索していたら、偶々浜辺に出ただけよ。』
帆波さんは、Cクラスをのリーダーを当てようと息巻いてこちらに出向いたらしかった。
私は、これ幸いと帆波さんに葛城君について聞いてみる。
「今回は坂柳さんが休んでるから、葛城君がAクラスを取り仕切ってるみたいだけど。」
「葛城は、頭のキレる男だ。坂柳が不在でも、仲間割れするような真似はしないだろうな。」
しかし帆波さんは、坂柳さん側についている人は面白くないだろうと呟く。
革新派と保守派の、両極端なのだそうだ。
私は帆波さんの言葉を聞きながら、1つ引っ掛かった名前を頭で反芻していた。
坂柳って、まさか…。
これは、清隆の耳にも入れておかなくちゃね。
その日の夜。
何とか1日を終えられた、と全体が和やかな空気の中。
池君が、Cクラスが船に戻っていく所を見たと言い出した。
あの場が藻抜けの殻だったのは、既に皆帰る自宅をしていたからだったのか。
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沙羅(プロフ) - 橋本ー!!!!ありがとうございます!この小説に橋本と龍園が出てくるだけで最高にテンション上がります!これからも応援してます! (3月27日 1時) (レス) @page22 id: e669b9fbcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜 | 作成日時:2024年3月18日 18時