蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ47)

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一週間なんて。ページ47

その言葉を述べる龍園君の瞳は、いつもと違って鋭かった。

「これが、俺のやり方だ。これ以上もこれ以下も、存在しない。」
「…そう。なら、好きにするのね。私達からすれば、好都合よ。」

身を翻して去ろうとする鈴音さんを、慌てて引き止めた。

『待って、鈴音さん。要件、もう1つあったでしょう？』
「…あぁ、そう言えばそうね。」
『龍園君、伊吹さんのことは知ってるよね？』
「うちのクラスの人間だ、それがどうかしたか？」
『彼女、顔を腫らしていたの。あれは、一体どういうことなのかなって。』
「支配者の命令に、背く手下は要らねぇ。軽く制裁を加えてやったのさ。」

いけしゃあしゃあと述べる龍園君に、いっそ寒気すら感じた。
彼には、私達と同じで恐怖なんて無いのかしら。
そういうことをしたらいずれ報復されるって、人間は何処かで怯えるものなのだけれど。
串に刺さった熱々の肉を豪快に齧った龍園君に、鈴音さんが再び問うた。

「貴方、初日で全てのポイントを使ったのね。」
「そういうことだ。俺は、全てのポイントを使った。伊吹がどうなろうと、ポイントを引かれる心配は無いってことだ。」

そうなの？という意味を込めて、チラリと清隆を見る。
清隆が、小声で教えてくれた。

「ルール上、300sポイントを失ってもマイナスは存在しない。影響は、皆無ってことだ。」

そうなんだ。
短絡的な思考だと鈴音さんが吐き捨てると、龍園君はそれを鼻で笑って流してから私の左手を掴んだ。
あ、まさか。

「俺と遊ばねぇか、A。専用のテントくらい、用意するぜ。」

やっぱり…。
明らかに目的がそういうことだと匂わされているようで、怒りを通り越して呆れてしまった。
こんな時でも、龍園君は龍園君だ。
私はそれを振り解き、歩き出そうとする鈴音さんについていく。
あっさりと手を離した龍園君の声は、まだ続いた。

「遊びたくなったら、いつでも来いよ。その時は、最高な気分を味合わせてやるよ。」

言われている訳でも無いのに、鈴音さんが私より嫌悪感を強く出していて、少しだけ笑えてしまった。
島中を見回っていたからか、帰り道はすっかり夕暮れで包まれている。
帰路の間、鈴音さんが険しい顔をしながら口を開いた。

「論外ね、自滅してくれて助かるわ。」
「あぁ。」
「節約すべき所は節約しないと、一週間は乗り切れないわ。」
「アイツは端から、一週間なんて見ていないんだ。」
「どういうこと？」