暗黙のルール。 ページ45
背を屈めて中に入ろうとする鈴音さんを、見張り役が腕で止める。
「へぇ、貴方達はここを占有しているの。」
「そうだ、下がれ。」
鈴音さんが、理屈を捏ねて無理矢理中に押し入ろうとしているのが目に見えて分かる。
結果は理解しているけれど、お遊びついでに少し口出ししようか。
私は、鈴音さんの後ろから声を上げる。
『でも、洞窟の中に入ってはいけないなんてルールは無いよね?占有中のスポットは利用出来ないけれど、内部を確認する権利はあると思うな。』
一瞬黙ったのを見計らい、微笑みながらも更に言葉を重ねる。
『これは、明確な独占行為だよ。ルール違反をしているのは、そっちじゃないかしら。』
反撃が出来なくなって歯を食い縛っている見張り役を見ていると、次いで現れた複数の気配に勘づいた。
背中に、視線を感じる。
これは…
「何をしている?」
「葛城さん!」
手を伸ばしていた鈴音さんの行く手を阻んだのは、中から出てきた葛城君だ。
…何故上裸なの。
剥き出しの肌に弓矢を背負い、
「客人を呼んで良いと、許可した覚えは無いぞ。」
「…っ」
「中を見せてもらうだけよ、それ自体はルール違反でも無いでしょ?」
相手が葛城君だろうと、臆さず口を開いた鈴音さん。
葛城君は、私の顔を見て少しだけ目を見開いた。
でもそれも一瞬で、葛城君は私達を鼻で笑う。
「なら、遠慮せず見れば良い。だが、覚悟はしておくことだな。1つの占有スポットを1つのクラスが押さえ、それを試験終了まで守り通す…この暗黙のルールに踏み込めば、戦争が起きるぞ。面倒なことは、避けておくことだな。」
葛城君の言葉を皮切りに、背後の気配が濃く増す。
チラリと後ろを見ると、思った通りAクラスの生徒達が各々の手に武器を持って現れていた。
ジリジリと距離を詰め、いつでも飛びかかれるよう臨戦態勢である。
住まいを強奪しに来た訳でも無いのに、そこまで警戒心を露わにされてもねぇ…
気を張りすぎなんじゃないの。
鈴音さんが、身体を硬くした。
気づいていなかったようだ、鈴音さんもこれくらいは想定しておかなきゃ。
気を取り直し、私は体裁を繕うように薄く笑った。
『ごめんね、葛城君。船上のレストランでも、ここでも。』
「また君か、君がついていながら何故こんなことをした?」
『だって、面白そうだったから。』
「面白い?」
葛城君の、片眉が上がる。
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沙羅(プロフ) - 橋本ー!!!!ありがとうございます!この小説に橋本と龍園が出てくるだけで最高にテンション上がります!これからも応援してます! (3月27日 1時) (レス) @page22 id: e669b9fbcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜 | 作成日時:2024年3月18日 18時