蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ42)

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SIDE 綾小路ページ42

試験開始2日目。
最初はどうなることか思っていたサバイバルも、今はリーダーである平田を筆頭に上手く回っている。
力のある男子が魚を獲り、女子達が果物を獲り、それ以外は飲み水を集める。
彼の的確な指示もあり、統率も取れていた。
人の良い笑みを浮かべながら、皆に指示をする平田を見つめる。
俺が食い入るように平田を見ていることが気になったのか、Aが俺の顔を覗き込んだ。

『清隆、どうかした？』
「いや、うちのリーダーは凄いなと思ってな。」
『リーダー…あぁ、平田君のこと。』

Aは、抱えていた果物の1つを川の水で洗いながら続けた。

『確かに、凄いよね。あれだけ暴れて手を付けられない須藤君や、何かと主張の強い軽井沢さん達の信頼をすぐに得て、クラス全体に指示を出しても嫌がられない立場に落ち着いた。普通なら、まずうざがられて引きずり降ろされるのに。』
「平田の人望の厚さは、正直想定以上だった。」
『そうね。あれだけ人が良くて成績もまぁまぁならば、Cクラスくらい目指せたと思ったのだけれど。』
「それを阻む程の、何か欠陥があるのかも知れないな。」
『何にせよ、何処かしらに欠点があるからDクラス(ここ)に落とされたのね。』

Aが、手にしていた果実を俺に差し出した。
昨日もあった、無花果だ。

「…くれるのか。」
『清隆にだけ、ね。』

受け取って彼女の顔を見ると、悪戯っぽく片目を閉じていた。

「良いのか、俺だけになんて。」
『獲ってきた人間の特権よ、個数まで管理されているわけじゃないから構わないわ。でも2つは流石に響くから、1つだけね。』
「…ありがとう、ならAも一緒に食べるか。」
『…1個しか無いのに？』
「あぁ。こっちだ。」

皆が平田や己の作業に集中している隙に、Aの手を取って離れた木陰に向かう。
凭れた木陰でAの身体を抱き締め、無花果を口に含む。
Aはこれから何をされるか分からないらしく、ただキョトンと俺を見上げている。
少し咀嚼してから、Aの唇に齧り付いた。
半開きだった彼女の口に舌を滑り込ませて、中の無花果を分けた。
突然の深いそれに戸惑ったらしいAの身体がひくりと動くが、構わず続ける。
口移しで、甘みと酸味の程良い無花果とAの口内を味わう。
強張ったAの身体が弛緩して、体重を預けてきた。
Aの膝が震え、ガクンと座り込みそうになるのを抱きかかえる。
真っ赤な顔のAの耳に、そっと囁いた。

続きは、また今度。