混乱と憤慨。 ページ40
桔梗さんは、警戒している伊吹さんの前にしゃがむ。
そして、手にしていたものを差し出した。
そこには、先程女子達が取ってきていた果物が乗っている。
「これ、食べて!」
それが、ここに受け入れられたサインだった。
それを伊吹さんも分かったらしく、驚いたように目を見張った。
バッと顔ごと逸らし、吐き捨てる。
「馬鹿じゃないの、どいつもこいつも…!」
「遠慮せずに、食べてね。それと、後でお話しようね!」
桔梗さんは何も物怖じせず、伊吹さんに食材と約束を押し付ける。
相変わらずの手腕だなぁと思っていると、急に須藤君の怒号が響いた。
「ふざけんなよ!!高円寺ィ!!!!」
森全体に轟きかねないその怒りに、何があったのかと気を注がれる。
しかも今、高円寺君の名前が出た。
まさか、とは思うけれど。
「どうすんだ!」
「本当勝手だよ!」
「それって、ポイントどうなるの?」
先程の一致団結した空気とは打って代わり、混乱が広がっている。
伊吹さんの元を離れ、輪の近くに立っていた清隆の傍へ走る。
『清隆!一体、何があったの?』
「高円寺が、体調不良を訴えて船に戻ったらしい。」
『体調不良!?』
思わず、素っ頓狂な声が出た。
昼間、あんなに森の中を元気にはしゃいでいた高円寺君が体調不良?
あり得ない現状に目眩を起こすと、同じように頭を抱えた平田君が滅多に見せない苦悩の顔をした。
「査定に従い、Dクラスは30sポイント差し引かれる。高円寺君はリタイアとなり、船内での治療と待機が義務づけられた。」
混乱と憤慨の空気が、充満する。
なるほど、皆が怒り狂っているのはそのせいか。
当初組み上げていた計画が、全てパァになったのだ。
そして、ただでさえカツカツだったポイントも更に減らされる。
ポイントがもらえるという、ただそれだけの結果を求めて動こうとしていたのに、彼1人の勝手な行動でクラス全体のバランスが一気に崩壊した。
この試験は、それをも試していたのだろう。
誰1人として欠けること無く、クラスの輪を乱すこと無く一週間を乗り切れるのか否か。
協調性。
もしそれを試していたのなら、この試験は初めから不利だった。
元々協調性なんて物は皆無に等しかったこのクラスで、一番の問題児である高円寺君が我が道を行かんで何をするというのか。
出鼻を挫かれた。
さて、このクラスはここからどうやって再起していくのかな。
上から、見学させてもらわなきゃね。
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沙羅(プロフ) - 橋本ー!!!!ありがとうございます!この小説に橋本と龍園が出てくるだけで最高にテンション上がります!これからも応援してます! (3月27日 1時) (レス) @page22 id: e669b9fbcc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜 | 作成日時:2024年3月18日 18時