蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ31)

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間一髪。ページ31

いや、今の君の言動こそ注意なさいよ。
思い切り聞かれてるし、と内心でツッコミをいれる。
警戒する葛城君の近くでその聞き耳を立てている私だったが、トントンと小さく肩を叩かれてそちらに視線を移動させた。
清隆である。
いつの間にか立っていた清隆が、声には出さずに指先を少し遠くに向けている。
なるほどね、と頷いた。

「停泊する前、船は遠回りをするように島の外周を一周した。あれは、ヒントだ。」

ヒント…？
足音を忍ばせながら移動する傍ら、辛うじて聞こえる葛城君の声に集中する。

「船のデッキからは、森を切り開いた道が見えていた。後は、最短ルートを進むだけだ。」
「学校側の意図を、見抜いていたんですか！流石です、これで坂柳も黙るしかありませんね！」
「…静かにしろ、弥彦。」
「葛城さん？」

この気配………気付かれた？
一定距離を稼いで、改めて木陰に身を潜める。
ここまでは追ってこない筈だけれど、警戒心の強い葛城君がここまで来ないとも限らない。
息を潜め、出来るだけ身を縮こまらせた。
足音が近づく、まだ遠い。
ガサガサと草を掻き分ける音、そう遠くない。
バサッと何かを広げる空気、そして葛城君の次へ行くぞという掛け声。
僅かに頭を上げて、葛城君達の方向を注視した。
彼が覗いていたのは、丁度最初に私達が居た所だった。
間一髪である。
声も届かなくなっただろうと判断し、大きく息をつく。
心臓が、嫌な音を立ててバクバクと高鳴っていた。

『危なかった……ありがとう、清隆。貴方のお陰で、何とかなったよ。』
「それは良いんだが、そろそろ佐倉を離してやったらどうだ。」
『え？』

言われて、やっと自分の手元を見やる。
耳まで真っ赤になった愛里さんが、魂を口から吐き出さんばかりに身体を揺らしてふらついている。
慌てて腕を伸ばし、その身体を支える。
いけないいけない、口元を抑えていた影響で酸欠にでもなったかな。

『大変！ごめんね、愛里さん。苦しかった？』
「だだだ、大丈夫です…！」

座り込んでしまった愛里さんを何とか立ち上がらせつつ、洞窟に足を運ぶ。

『あの2人は、Aクラスの生徒だった。ということは、ここはもう彼らの拠点ね。』
「そうなるな。」

奥には確かに、Aクラスの文字とタイマーらしきカウントが始まっている。