蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ30)

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スポット。ページ30

『わぁ…凄いね。』
「あぁ。」
『もしかして、ここがスポットってやつなのかしら。』
「多分な。」

スポットというのは、島に幾つか存在する空間のことだ。
茶柱先生が、滔々と告げた沢山の言葉を思い出す。
一度占有するごとに1ボーナスポイントを得られるが、そのポイントは試験中は使用出来ない。
試験終了時に、クラスポイントとして加算されるのだ。
占有権を所持するのは一度につき、8時間のみ。
クラスのリーダーだけが、占有を宣言出来るのだそうだ。
スポット占有のためのキーカードが、リーダーには与えられる。
勿論、正当な理由無くリーダーを変更することは出来ない。
そして。
7日目の最終日、点呼のタイミングで他クラスのリーダーが誰かを的中させられたなら、クラス1つにつき50ボーナスポイントを得られる。
但し、間違えればその逆でマイナス。
ハイリスク・ハイリターンだ。
他クラスのリーダーを探すも良し、自クラスのリーダーを隠すも良しである。
なるほど…スポットを1つ得られただけでもポイントゲットは確実だし、そこが好条件の所であればある程にリーダーを隠しやすくなる。
茶柱先生が、スポットは重要だと言っていた理由も分かる。
今の所人気は無いが、もし覗き込んだ先に人が居た場合。
後をつけられて、クラスの状態を知られてしまう。
目先の空洞を見つめた。
安易に動けば、クラスのリーダーを晒すことに繋がる…勝手には動けない。
愛里さんが、一歩先に踏み出した。
直後、空洞だった筈から足音が聞こえてくるのが分かった。
そこからは、実に早かった。
渾身の力でもって愛里さんを引っ張り、口を塞いで木の陰に隠れる。
清隆も、私達の足元にしゃがんでいた。
洞窟から出てきたのは、葛城君である。
流石はAクラスね、スポットの獲得までが迅速過ぎる。
ふと、葛城君の手元が視界に映った。
その手には、占有権を持つリーダーに与えられるキーカードがある。
まさか、とは思うけれど。
目を細めて状態を伺っていると、奥から更にもう1人現れた。
葛城君と共に、レストランで食事をしていた青年だ。

「運が良かったです、葛城さん。こんなに早く、スポットを押さえられるなんて。」
「運？上陸前から目星はつけていた、発見は必然だ。それから、言動には気をつけるんだ。」
「は、はい…」
「何処で誰が聞き耳を立てているか、些細なミスもしないよう心がけるように。私には、リーダーとしての監督責任がある。」