蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ25)

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正しい意見でも。ページ25

「許可無く腕時計を外した場合、ペナルティが課せられる…か。各種センサーとGPSが搭載されていて、非常事態への対応も万全だな。」
『万が一生徒が行方不明になっても、一応は探し出せるようになってるんだね。』
「あぁ、用意周到だ。」

遠くで、軽井沢さんが平田君にすり寄っていくのが見える。
晴れて平田君の彼女というかなりのステータスを手に入れた軽井沢さんは、最近より女子の間でその強さを増している。
私も、あの子に強く言われたら逆らえるか分からない。
怖いのではなく、それを期に周囲から敵視される未来の方が恐ろしいからだ。

「ある程度は、ポイント使っても良いんじゃない？」
「う〜ん…」
「いや、やれる所まで我慢してやるべきだ。」

やっぱり、争いが始まった。
想定よりも早いな、ここで話を深堀りしたことが良くなかったらしい。
軽井沢さんの提案に一も二もなく反論したのは、確か幸村君という男の子だ。
眼鏡をかけた大人しい男子というイメージが強かったが、彼はこの試験のことをかなりよく考えている。

「でも、あれは流石に…」

軽井沢さんか視線で示すのは、簡易トイレだ。
吸水仕様になっている袋の中で用を足し、何度か使って捨てる。
複数回使用可能な、使い捨てトイレみたいなものである。
なるほど、それが嫌なのか。
他の女子達が揃って賛同の声を上げる、相当嫌なのだろう。
我慢出来る所はしたいが、嫌悪感を示す人は少ならかず居る筈だ…と言うのが軽井沢さんの意見。
すかさず池君が、それで我慢しろよと事も無げに告げる。
軽井沢さんの強気な言葉が応酬される中、平田君が目敏く何かを見つけた。

「ポイントで購入可能なものには、普通のトイレもあるね。」

女子達は一斉に群がり、それを買おうと押す。
勿論幸村君も黙っておらず、最低でも過半数の意見を集めてから購入すべきだと言う。
正論だ。

「感情で動く女子の好き勝手を全て聞き入れていたら話にならんぞ、平田。」

それも無論、正論だ。
けれど…理屈でのみ物事が判断されて世界が回るのならば、元よりこの世に争いなんて不条理なものは存在しない。
というか、幸村君の言葉にも棘がある。
そんなんでは、例え正しい意見でも反感を買ってしまう。
案の定軽井沢さんが食ってかかるが、平田君が何とか押し留める。
いよいよ平田君1人では制御出来なくなりそうなので、私も微力ながら協力しようと前に進み出る。