蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ24)

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長い目で。ページ24

平田君が、山内君の呑気な言葉にも丁寧に対応する。
今はそんな遊びのことばかり考えている暇が無いことくらい、いい加減察してほしいのだけれど。

「ポイントで買えるものは、幅広い。飲料水や食料、バーベキュー機材。」

だが、そう簡単にポイントを使用する訳にも行かないのが、この試験のいやらしい所だ。
与えられた300というポイントの残りが、試験終了後クラスにそのまま渡されるからだ。
つまり、ここで限界まで我慢して乗り切り今後使えるポイントを増やすか、今を耐え忍ぶためにポイントを使うか…だ。

『長い目で考えるなら、今を我慢して今後のためにポイントを貰うのが最善手なんだよね。』
「あぁ。でも、そうは行かない。」
『うん。今を乗り切れる生徒達が一体何人居るか……多分、争いが起きるとしたらここだよね。』
「そうだな。Aは、大丈夫なのか。」

幾ら鍛えられてきたからと言っても、急にこんな環境に放り出された私のことを気にかけてくれているらしい。
愛おしさで引っ付きたいのを耐えて、ニコリと笑って見せる。

『何をとっても貴方に次ぐ成績だった私よ、こんなんどうとでもなるわ。』
「けど、女子には女子なりの悩みってもんがあるんじゃないのか。」
『勿論、現実的な話をすればそうなる。けれど、案外一度経験してしまえば何とかなるものよ。それに今回は、このデリケートな問題に関してを、何処まで男子側に譲歩出来るかが問題だよね。』

私達が会話している間にも、平田君を中心とした話し合いは続いていた。
試験の概要とルールさえ分かれば、後は何がいけないのかくらい容易に想像がつく。
片耳で聞いていても、十分な情報量だ。
向こうでは、ペナルティを受ける行動が一覧で示されているらしかった。

「体調不良や大怪我、著しい環境の汚染、朝と夜の点呼時の不在、他クラスへの暴力や略奪。」
「ポイントって、増えるんだっけ？」
「島の各地にあるスポットを1つ確保するごとに、ボーナスポイントが付与されるよ。」

清隆が、鈴音さんに近付く。

『特別試験のテーマは、自由…ってことみたいだね。』
「らしいわね。上手く凌げば、上位クラスに近付けるかも知れないわ。」

ふと鈴音さんが手首を見やり、邪魔だと呟いた。
これか、と私も己のそれを見る。
手首に施された、否強制的につけさせられた装置が黒く光った。