蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ22)

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ここまで言っても、まだ分からないの？
仕方無い、有効活用出来るかも知れない生徒がAクラスに居たって事実を知れたから、お礼に教えてあげるか。

『いつ私が、「私が所属するクラスを当てて」と言ったかしら。私はただ、「当てて頂戴」と言っただけよ。何処の誰なんて、一言も言って無いわ。』

小賢しいぞと言わんばかりに、橋本君の顔が歪む。

「ちょっ、それは無いんじゃない？」
『勝手に乗っかってきたのは、他でもない貴方じゃない。私はそれに、無理矢理付き合わされたの。何でそれに関して、私が怒られなければならないの？理不尽過ぎて、涙が出るわ。』

思い返し、確かにそこは断定していなかったことを悟ったらしい橋本君。
唇を噛み締め、してやられたと悔しげな橋本君に追い打ちをかける。

『それと、この腕組みは意識的よ。』
「え？」
『プロファイリング、私も少し齧っているの。どんな動きが胸の内の本心を表すのかくらい、ちゃんと知ってる。だから、敢えて分かり易いようプロファイリングの要素を散りばめていたの。気づかなかったのね。』
「…」

気づけば、橋本君は指先で耳元をいじっている。
唇の端を釣り上げ、嘲笑してやる。

『あーあ、計画を台無しにされて悔しくて不満って感じね。』
「っ、何でそう思う？」

ギョッとしたように、目を見開く橋本君。
まぁ、これ以上親切にしてやる義理も無いよね。
私は、デジャヴのする店を見上げて息を吐いた。

『………本当のプロファイリングは、種明かしをしないものよ。それじゃあね、Aクラスの橋本正義君。もう少し、お勉強し直してからナンパして頂戴。』

おちょくるように、後ろ手で手を振る。
橋本君も、いずれ気づくだろう。
いつの間にか、2人が会った美容室の前に戻ってきていたことに。
すごろくで言うならば、「振り出しに戻る」というやつである。
物理的な位置情報でも、会話からの2人の関係性も振り出しに戻ったのだ。
今頃、面白いじゃん…と舌舐めずりでもしていることだろう。
橋本君のような人は、一度目をつけるととことん追いかけてくる。
また、面倒事が増えたなぁ。
ため息が、無意識で漏れた。
　

耳をいじる…………相手への不満を表す、行動心理学の動きの1つ。