蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ18)

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フル稼働。ページ18

朝イチでここまでツッコめる私の脳は、今日も朝からフル稼働してくれているようで安心する。
それと同時に、清隆が人目も憚らず私の部屋に突撃してくることが珍しくて、少し不安になる。
私を腕枕してくれていた清隆にすり寄りながら、問いかけた。

『何かあったの？』
「何かって。」
『こんな人目も気にせずに部屋に来るくらいだから、何かあったのかなって思って。』
「……」

何故か、清隆が押し黙った。
え、余計なこと言ったかな私。
己の言葉をもう一度反芻しながら、そこに何ら変なポイントが無いことを確認する。
暫くして、清隆が口を開いた。

「……恋人の部屋を訪れるのに、理由が必要なのか。」

今度黙るのは、私の方だった。
静かに頭を撫でてくれる清隆の手まで、恥ずかしいやら照れるやらで熱く感じられる。

『…起きる。』
「あぁ。」

起き上がって改めて、清隆が既に制服を着ていたことが分かった。
行動が早い、私も追いつかなきゃ。
ベッドから足を下ろしたのと同時に、船内放送が入った。
間もなく、島が見えてくるらしい。
意義ある景色が見られる、との言葉に違和感を覚えた。
清隆も同じだったようで、私のことを見つめてくる。
うん、と頷いた。
無意味なことを、学校側は放送したりしない。
何かしらの意図があるのだろう、ならばこれも意味がある筈だ。
慌てて身支度を整え、共に外へ出る。
甲板には、同じような生徒が沢山出ていた。
桔梗さんが見えたので、彼女の傍へ向かう。

「おはよう、綾小路君とAちゃん！」
「あぁ。」
『おはよう、桔梗さん。』

視界の奥にそびえる、大きな島を見た。
あそこが、目的地か。
自然しか無いように見える島で行われるであろう試験なんて、大体想像がつく。
わぁ、これは男女の亀裂が物を言う試験になるわね。
今から起こりそうだと空想する揉め事に、ため息が落ちる。
チラリと、桔梗さんを見やった。
感動するなぁ、と間延びしながら私にも問いかける桔梗さんはいつも通りの彼女のようである。
まぁ、近くではないにせよ周りには大勢人が居る。
こんなところじゃ、彼女の本性はそうやすやすと出せまい。

「そういえば、堀北さんは？」
『え？』
「一緒じゃないの？」
「さぁ……旅行を満喫するタイプじゃなさそうだし、部屋に居るんじゃないか。」
「そうかも。」

やがて、船を降りる。
全員ジャージ指定で、私物は諸共没収された。