蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ15)

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困った時は。ページ15

すっかり日の暮れた夜。
夜ご飯も食べ終え、食休みも兼ねて私は船内をぶらついていた。
清隆は、3馬鹿達に引っ張られるように何処かへ行っている。
何だかんだで仲良くしてるよね、あそこの4人。
そこに清隆が居るのはどうなのかとも思ったけれど、入学式の時の悶々とした彼を見た後では、「お友達が出来て良かったねぇ」と言いたくなるような親戚のおばさんらしい感慨深さがある。
ふと、愛里さんの後ろ姿が視界に映る。
ストーカー騒ぎから、何かと友好関係を維持している彼女。
1人で海を眺めているようなので、折角ならと話しかけに近寄る。
傍へ行くと、何やら独り言を呟いているようだ。
話しかけない方が良いだろうか、けれどもう近くまで来てしまったし。
まぁ良いか、と気を取り直す。

『愛里さん。』
「とぉぉぉぉ！？！？！！？」
『と？』

桔梗さんと言い愛里さんと言い、世には不思議な叫び声が流行っているな。
首を傾げながら、おっかなびっくり振り返る愛里さんと目を合わせる。

『どうしたの？愛里さん。』
「いいいいいつの間にそこに！？」
『今来たところよ。』
「聞いた！？私の話聞いちゃった？！」
『ううん、大丈夫。』
「良かったぁ。」

そんなに聞かれちゃまずい話だったのかしら、それはそれとして気になる。

『何かあったの？』
「何があったって訳じゃないけど、まだ私クラスの人と上手く話せなくて。ごめんね、勝手に頼ろうとして。」
『別に良いのよ、愛里さん。話を聞くだけなら、私にも出来るもの。』
「ありがとう！」
『そんな大したことじゃないわ、困った時はお互い様でしょう？』

私の手を握って、涙目になりながらお礼を言われる。
そこまで彼女は切羽詰まっていたのだろうか、まだメンテナンスが足りなかったとか。
若干面食らっていると、今度は桔梗さんがやってきた。
今日は何だか、色々な人と会うな。
愛里さんは、桔梗さんの姿を見るや否やパッと手を離して俯く。

「私……部屋に戻るね。」
『え？そう、また明日ね。』

桔梗さんの静止も聞かず、愛里さんは走っていってしまった。

「ごめんね、声かけない方が良かったかな？」
『ううん、平気よ。』

多分あの子の場合、人見知りがまだ治っていないというのもあるが、相手が桔梗さんだからさっさと居なくなったと言うのもあるだろう。
まだ完全に信じきれていないのだ、鋭い感性で少し興味が湧く。