蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ14)

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飼いならされた。ページ14

相手が龍園君だろうと何だろうと、好戦的な姿勢を貫くその姿に少しだけ感心を覚える。
しかし、彼の顔面ど真ん中に当たる筈だった攻撃は難なく防がれた。
ずっと傍に張り付いている、外国人生徒が止めていた。
なるほど、用心棒か。
けれど、龍園君の骨格や筋肉の発達具合からすると、用心棒を雇う必要性は全く無さそうなのだけれど。

「アルベルト？！アンタ、それで良いの？！」

伊吹さんの抗議に、アルベルト君は何も言わない。

「…すっかり、龍園に飼いならされたって訳…！」

どうでも良さそうにその場から離れた龍園君に近づこうと、アルベルト君に背中を見せる伊吹さん。
あぁ、それやっちゃったら終わりよ。
仮にも戦っていた相手に背中なんて見せたら、どうぞ勝ってくださいと降伏しているようなものだ。
案の定伊吹さんは関節を決められ、身動きが取れなくなる。
ここで骨を折るような揉め事を起こす馬鹿を、龍園君も飼っている訳じゃないだろう。
私が止めに入ったとて、あの足で蹴り飛ばされるがオチだ。
そんなんでへこたれる私じゃないが、龍園君の視界の傍で本気なんて出したら洒落にならない。
大人しく、事態を見守らせてもらおう。
鈴音さんは流石に見ていられなかったらしく、伊吹さんの元へ行こうと立ち上がった。
しかし彼女が止めに向かうよりも早く、アルベルト君が伊吹さんを突き飛ばす。
飛ばされた伊吹さんは、鉄製の柵に身体をしたたかに打ち付けた。
わぁ、痛そう。
助走までつけて思い切り突き放したから、かなりのダメージを食らっただろう。
アルベルト君が、英語で小さく呟く。
直訳すると、このくらいにしておいてやる、みたいなものだった。
突き飛ばされ尻餅をついて動かない伊吹さんの元へ、清隆が近寄る。
おっと、興味を持ったのかな。
私もそれに従って、伊吹さんの傍にしゃがみ込んだ。
大丈夫か、と差し伸べた手を伊吹さんが跳ね除ける。
アンタには関係無い、ね。
多分、ここで出会ったが運の尽きよ。
どう見てもCクラスの頂点である龍園君と、その彼に噛みつく伊吹さん。
茶柱先生の挑発に乗ってAクラスを目指すのなら、Cクラスが目下一番近くに居る討伐しやすいライバルだ。
私達の計画の駒として、動いてもらわなくちゃ。
ズンズンと歩き去っていった伊吹さんの後ろ姿を見て、鈴音さんが漏らした。

「Cクラスの崩壊は、近そうね。」

清隆と私は、何も答えない。