蝶は鳥にはなれずとも 3 (ページ11)

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橋渡し。ページ11

暫く彼を見つめ続けていると、やがて平田君が笑顔を消して真顔になった。

「綾小路君と旋毛風さんに、少し相談したいことがあるんだ。」

やっぱり。
人間、裏で何かを計画していたり相手を自分の思い通りにしたい時、その人に妙に親切にしたり交流の場に引っ張り出そうとするきらいがあるけれど、彼もそうだったか。
…そうであっほしくなかった、と言うのは私の我儘だ。

『相談？』
「僕と堀北さんの、橋渡しになってくれないかな。この先Dクラスが一致団結していくために、堀北さんは必要不可欠な人だと思うんだ。聞いた話だと、須藤君の無罪を証明したのは、堀北さんだって言うし。」
『…清隆は分かるけれど、私まで何故？』
「旋毛風さんは、クラスの女子達の中では一番堀北さんと距離が近いからね。綾小路君だけでも良いけど、やっぱり同性の子が居た方が堀北さんのためにもなるかと思って。」

なるほど、クラスのために…か。
そして、いつも孤立している鈴音さんの交友関係も変えられる。
理にかなった、合理的な手段だ。
熱い口調で語る平田君に、どうするのかと清隆を仰ぎ見る。
相変わらず何を考えているか分からない瞳だけれど、また面倒事が増えたなとは思っていそうだ。
ふと、着信音がする。
平田君のものからだった。
彼が、端末を見て眉を八の字に下げる。
説得時間を中断するような電話、そしてこのタイミング。
察しがついた。

『…出てあげたら？』
「え？」
『電話、相手は軽井沢さんでしょう？なるべく早く出ないと、女の子は拗ねちゃうわよ。』

悪戯っぽく笑って言うと、平田君は観念したように微笑む。

「もし気が変わったら、僕の携帯まで連絡してくれるかな。綾小路君でも旋毛風さんでも、どちらでも良いから。」
「分かった。」
「じゃあ、また。」

そう言って、電話の向こうの彼女サンにごめんごめんと謝る平田君は去っていった。
今度は、私の端末に振動が入った。
見ると、鈴音さんからである。
珍しいことも、あるものだ。

『清隆、鈴音さんから連絡が来たよ。』
「何だって。」
『夕方、清隆を連れて指示した所に来て…って。ご指名よ、清隆。』
「茶化すな、A。分かった、行こう。」

船に揺られて早くも、1日が終わろうとしている。
そんな気配を感じつつ、私と清隆は鈴音さんとの待ち合わせ場所に向かった。
到着すると、既に彼女はカウンター席に座って読書している。
常時吹いてくる潮風が寒いのか、上着を羽織っていた。