蝶は鳥にはなれずとも。 (ページ8)

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不良品。ページ8

「それくらい、教えてくれても良いんじゃないのか。」
「拒否しても構わないかしら。」
『私も知りたいの。それに、隣同士で名前も知らないのは居心地悪いと思うけれど。』

私達の畳み掛けるような説得に疲れたのか、少女はこちらを初めてしっかりと見つめて口を開いた。

「…堀北鈴音よ。」
「堀北？」
『確か生徒会長も…』

それより先は聞きたくないと言わんばかりに、堀北さんは眼の前の商品を籠に入れていく。
私と同じように、安いものばかりだ。
清隆が会話を続けようと試みたが、全て「必要無い」と一言で一蹴される。
あの清隆が若干引きながら返事するのを見て、私は傍で堪えきれずに少し笑った。
挙げ句、「人付き合いが得意じゃない」とか「会話が下手」とまで言われる始末だ。
ピンポイントで清隆の弱点を言い当てられ、少しだけ彼女を見直す。
ただ「コミュケーションが壊滅的な駒」だと思っていたけれど、どうやらそれだけでは無いらしい。
ふと、堀北さんの目が右横の棚に移る。
私も先程見つけた、「無料商品」だ。
ここまで救済措置が分かりやすく置かれていると、いよいよただ単に毎月6桁のお金が振り込まれる訳じゃないのだろうと検討がつく。
彼の傍に近寄り、そっと耳打ちする。

『ねぇ、清隆。』
「あぁ、恐らくは俺達の想像通りだ。」

ついこの前まで中学生だった生徒達に、この豪華な待遇は少しばかり不自然だ。
とするならば、導き出される結論はただ1つに絞られる。
思考を整理していると、店外から怒鳴り声が響いた。

「ナメてんじゃねぇぞ！！あぁ！？」

外を覗くと、先程机を蹴っ飛ばしたあの男が3人の男達に何やら煽られているようだった。
背景は分からないけれど、多分先輩達に喧嘩を売られたもんで、カチンときた彼が言い返しているのだろう。
というか、これ以上やったら殴り合いの大喧嘩に発展しそうな雰囲気だ。
慌てて会計を済まし、まだ堀北さんと話している清隆より少し先に店を出る。

「惨めなお前ら『不良品』をこれ以上いじめちゃ、可哀想だもんなぁ。」

不良品？
私がその言葉に戸惑っている間に、群がっていた3人組が去っていこうとする。

「逃げんのかオラァ！！！」
『ちょっと！向こうが手も足も出してないのに、これから喧嘩を売って損をするのは君だよ？』
「うるっせぇなその手を離せ！！」
「吠えてろよ。どうせお前ら、これから地獄を見るんだからな。」