蝶は鳥にはなれずとも。 (ページ7)

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---SIDE 綾小路ページ7

コンビニにて、必要なものを買っていく。
隣のAは、何やら色々と考えながら籠にポイポイと必需品を放り込んでいく。
よく見ると、かなりお安めの商品ばかりだ。
俺はAの頬をさりげなく擦り、こちらを向かせる。

「良いのか？そんな安いやつで。もっと高いものもあるだろ。」

Aは、撫でられる頬を嬉しそうに緩ませて笑う。

『良いの良いの。元々ブランドとかに執着無いし、ちゃんと使えれば何だって良いわ。』
「そうなのか。」
『うん。あ、けれど…』
「ん？」

Aは一旦言葉を区切り、そっと俺を見上げた。

『清隆が、高いもので飾り付けた私が良いって言うのならそうするけれど…どう？』

Aは偶に、こうして俺を試すような口調をする。
俺が耐えてこられたのは、正直奇跡に近しいのだが。
今だって、もし公衆の面前でなければどうなっていたか。
思わず抱えたくなる自身の頭を振りつつ、Aの頭を軽く小突いた。

「…お前は俺を、昼間から彼女を襲う獣にしたいのか？」
『なぁに急に。私はそれでも良いから、こうして誘い文句を紡いでいるっていうのに。』
「…Aの冗談は冗談に聞こえないから、なるべく控えてくれ。」
『あははっ、清隆が言うならそうする。』

Aはやっとニヤニヤした表情を真面目なそれに戻し、改めて彼女自身の端末を見つめた。

『それにしたって、随分と太っ腹な学校よね。』
「あぁ、俺もそう思う。」
『1クラス26人で各学年4クラスだから、全校生徒は300人ってところでしょ？全員に毎月10万も支給していたら、年に3億6000万の出費ってことだもんね。』
「いくら国が運営していると言ってもな…」

不意に、Aが端末ではなく俺の後ろを見た。
つられて振り向くと、隣の先の女子生徒が陳列棚に置かれた商品をじっと見ている。
雰囲気だけで見れば、まるで品定めをしている一家のお嬢様のようだ。
こちらの視線に気付いたのか、生徒がこちらをちらりと一瞥した。

「…またしても、嫌な偶然ね。」
「…そう警戒するなよ。まぁ隣の席同士、今日からよろしく。」
『よろしくね、えっと…名前聞いても良いかな？』
「…」

沈黙。
名前すら教えないつもりか。
不審がられるにも程がある、というかこちらも若干傷付くんだが。
Aが優しく後を継いでも、中々口を割らない。

『仲良くして〜なんて、言うつもりも無いの。ただ名前は知っておいた方が、今後何かとスムーズに事が運びそうじゃないかな？』