蝶は鳥にはなれずとも。 (ページ6)

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情報収集は、私の役目。ページ6

『はぁい！』

任せて、清隆。
この学校での情報収集は、私の役目だから。

『初めまして、旋毛風Aです。特技や趣味があまり無くて、皆と話が合うか分からないのが少し怖いですが…仲良くしてくれると、とっても嬉しいです。この高校で友達100人作るのが目的なので、どうか皆さんも沢山話しかけてくださいね！あ、因みに今ジミ〜な自己紹介をした彼は私の幼馴染なので、彼についても何か聞きたいことや知りたいことがあったら、私に連絡ください！よろしくお願いします！』

「生まれた環境」で培ってきた最大級の笑顔とユーモアで、何てことは無い自己紹介も華のあるものにする。
簡単だ、児戯に等しい。
ついでに清隆のことを一番知っているというマウントも取れたし、私としては充分だ。
クラスの人達もそれなりに笑っているし、まぁ及第点だろうと思う。
平田君がにこやかに次を促した瞬間、机を蹴っ飛ばす治安の悪い音が響いた。
ガタイの良い喧嘩っ早そうな男子生徒が、椅子に踏ん反り返ってこちらを睨みつけていた。
こんなことをするなんて幼稚だ、と言いたいらしい。
あんな人別にどうでも良いけれど、あまり不穏なことが続くようなら注意して観察しなくちゃいけないな。
私達の邪魔をする分子は、早い内に排除しておかないとね。

「お前達、席に着け。」

冷めた声が飛んでくる。
高らかにヒールを鳴らして現れた先生は担任の茶柱だと言い、この学校の資料を配り始めた。

「まず全寮制で、在学中に敷地内から出ることと外部との連絡を制限している。」

正直、これが一番助かっている。
面倒なことになるもの、「奴ら」が来たら。
そして、先生はこうも言った。

「この学校では、あらゆるものをポイントで買うことが出来る。」

あらゆるもの、か。
自身に与えられた端末に示された100000の文字列を見つめ、ふと思案した。
飲食物や衣服や娯楽に使うものは当然として、普通そんなことをわざわざ言うのかな。
そして何より気になったのが、「この学校は実力で生徒を測る」という言葉。
実力至上主義ってことなのだろう、高校生に与える言葉にしては随分と重みのあるものだ。
含みのある説明に違和感を覚えつつ、ちらりと後ろの清隆を見やる。
彼も、何か考えている様子だった。
私も改めて思う。
これは、簡単に終わる3年間にはならなさそうだ。