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SIDE 綾小路。 ページ49

脳が、稼働していないのが分かる。
空っぽの頭脳に蘇るのは、白い壁に囲まれた景色。
そして、隣でいつも手を握っていた唯一無二。
だが、ここはあの白い監獄ではないようだった。
瞳は何かを映しているのに、肝心の何かが分からない。
手に何かを持たされ、飲んでと促される。
機械的に口をつけると、あたたかな液体が口腔内を満たす。
ホットミルクだった。

「……………A。」
『うん?私はここにいるよ。』

呟くように名前を呼ぶと、すぐ傍で柔らかな声が響く。
首を動かして、そちらを見た。
柔和な表情を俺に注ぎ、背中を擦り続けている幼馴染。
嗚呼、Aだ。
「あの部屋」の中で唯一心の安寧を守ってくれた、俺に並ぶ「次世代兵器」。
「最高傑作」と持て囃されながら、様々なことを教育された過酷な箱庭の中。
いつの間にか俺と同じ実力を保持しながらも、感情を鈍らせること無く彩りを放ち続けたAを、俺は己のエゴと彼女の願いを理由に連れ出した。
籠の中から、外に引っ張り出した。
…外に?

……そうか、ここは。
視界が、少しずつ明るくなる。
目に映しているものが何なのか、やっと理解出来てきた。
目の前の少女に、俺は問うていた。

「……A、俺はまた。」
『何がトリガーなのかは分からないけれど、ちょっとの間ね。』

ごく稀にこんな状態に陥る俺を見ても嫌な顔1つせず、ゆっくり元に戻してくれる幼馴染に感謝しつつ、俺は飲み終えたホットミルクのマグカップをキッチンに置く。

『清隆、もう大丈夫なの?』
「あぁ、また心配かけたな。」
『気にしないで、けどどうしてまた急に…』
「恐らく、櫛田のことがあったからだ。」

何がきっかけになるか、俺もよく分かっていない。
だが、「自分を徹底的に偽って生活する」というスタイルには、とても覚えがあった。
言わずもがな、普段の俺とAである。
過去を隠して普通を演じている俺達と、本性を覆って見えなくしている櫛田。
恐らくは極端に似ている存在を見て、過去が疼いてしまったというところだろう。
自己分析も終わったし、夜も遅い。
Aの通り、明日もまた普通に学校がある。

「…寝るか。」
『そうね。』

電気を消してベッドに転がるAを抱き締めて、目を閉じる。

『…清隆。』
「ん?」
『私は、どんな清隆も好きよ。だから、1人で過去に囚われないでね。』
「…」

それだけ言って眠ってしまったAを抱き締める力を強めて、返事に代える。
俺もだ。

作者から。→←感情が欠落。



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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月6日 18時

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