蝶は鳥にはなれずとも。 (ページ45)

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私達と同類。ページ45

怪訝に思いながらも、どんどんマンションから離れていく桔梗さんに付いていく私達。
…端から見れば、私達の方が危険人物扱いされかねない。
清隆1人で追いかけていては、まずかったかもな。
とうとう彼女が足を止めたのは、川辺だった。
何となく気が引けて、清隆と2人物陰に隠れる。
別に隠れる必要は無いのだけれど、こんなとこまでついてきたと思われたら後々厄介だし。
しかし、私達はついてきたことを後悔することになる。

「……あぁ〜ウザい。」

今の今まで沈黙していた桔梗さんの口から、普段の数倍低く淀んだ声が溢れた。
え、と声が出てしまったのは仕方が無い。
目を見張り、木陰から桔梗さんの方を見る。

「自分が可愛いと思って、お高くとまりやがって…あぁ最悪！最悪最悪最悪ッッ！！！」

ガンッ！！と鉄の柵を蹴り続ける桔梗さん。
鈍く振動する柵を何度も何度も、足が怪我をするのではと思うくらいに蹴り飛ばす眼の前の少女の変貌に、驚きと興味と共感を隠しきれない。
嗚呼、やはりお前も私達と同類だった。
桔梗さん、貴女も自分を偽っていたのね。
人は誰しも、本当の自分というものを隠して生きている。
それは勿論、私達だって例外ではない。
桔梗さんは、そんな私の複雑な心境の変化など知らずに、柵を蹴っては鈴音さんへの悪口を叫び続ける。

「ほんっとウザい！ウザい！！旋毛風も！！」

お、私？
今度は、私のことを吊し上げ始めた。

「自分は何もしてないとか何とか、散々テキトーをのたまいやがって！！！あの薄っぺらい笑顔も！！私の立ち位置を奪おうとする魂胆も！！全ッッ部見えてんだよあの女ァ！！」

おぉおぉ、分かりやすく嫌っているところを述べてくれてありがとう。
お陰で、今後貴女への対応の仕方を参考に出来るよ。
人間ってやっぱり、汚いところが多いんだな。
でもね、桔梗さん。
私は正直、いつもの桔梗さんよりも今の貴女の方が好感持てるよ。
人間味があって、貴女も私達と同じ穴の狢なんだって安心出来る。
口角が歪んで釣り上がる。
笑いが漏れそうなのを抑えていると、桔梗さんの端末が音を鳴らした。
あ、まずいな。
咄嗟に端末を手で隠しても、既に遅い。
出来るだけ弱みを握っておきたかったのだが、そうは上手くいかないらしい。

「誰、そこに誰か居るの。」

桔梗さんもそこまで馬鹿では無いようで、空耳とは信じてくれなかった。
こっちに来られるよりは、我々から出ていった方がマシだ。