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ルールはルール。 ページ38

呆然とする須藤君の代わりに、平田君が待ったをかける。
桔梗さんも次いで立ち上がるが、先生は竹を割ったようなさっぱりとした物言いである。

「ルールはルールだ、諦めろ。」

HRは終わりだと言い、先生はさっさと居なくなった。
後ろを向き、清隆と視線を合わせる。

『どうする?』
「俺が立ち上がるタイミングで、適当にカモフラージュしてくれ。先に行くから、お前は後から来い。」
『分かった。』

小声で会話をし終え、私は清隆が席を立つのとほぼ同じタイミングでガタンと大袈裟な音をさせて腰を上げる。
視線が、一挙に私に刺さる。
清隆には、皆一瞥もくれない。
よし、上手く行きそう。

『やっぱり私…納得出来ない!』
「Aちゃん…」
『過去問も配って、須藤君だって一生懸命勉強したのに…それなのにこの仕打ちなんて!』

清隆が扉を閉めた。
そろそろ良いだろう。

『……私、先生に掛け合ってくる!』
「えっ!?」
『たとえ意味が無くても、やるだけのことはしたいから!』

驚く桔梗さんを片目に、私は教室を飛び出した。
遥か前方を歩く清隆に追いつくよう、音を立てること無く走り出す。

普段の私だったなら、まず間違い無く須藤君なんて駒は切り捨てるだろう。
自分から努力しようとせずに与えられたものだけ必死こいてやって、それなのに上手いこと結果が出なければ相手にその後悔をぶつける。
ガキかよ、一体何歳なんだ。
まずは、自分から出来る限りのことをする。
相手に頼るのは、その後じゃないのか。
怠惰で、どうしようも無い我儘な子供。
私なら、一発でご退場願いたい人物だ。
けれど、清隆が動いてどうにかしようとしたってことは、不要な駒というだけでは無いのだろう。
きっかけはどうであれ、結果は清隆が動いたからここまで良くなったのだから。
彼は、どうでも良い人間には本当に興味を持とうとしない。
それこそ、道端に落ちてる小石よりも軽くて無意味な存在として無視する。
そんな清隆が、私と共に目立つリスクを背負って動いた。
ならば、私の意見はどうでも良い。
駒が駒らしく流暢に動くようメンテナンスをし、磨いておくのが私の仕事なのだから。

清隆は目の前だ。
彼の肩に手を伸ばそうとして、足下が疎かになって思い切りつんのめる。

『あっ…!』

私の小声のヘルプが聞こえたのか、清隆が振り返った。
今にもコケそうな私を見て、ため息を零す清隆。
ちょっと、呆れてないで助けて清隆…!

今の日本は。→←赤点ラインは。



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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月6日 18時

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