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赤点ラインは。 ページ37

そして、テスト前日。
放課後、私は桔梗さんと共に教壇に立って例の過去問を配っていた。

『引き留めてしまって、ごめんなさい。帰る前に、どうしても渡したいものがあるの。』

そう言いながら、次々と書類を手渡していく。
手にした軽井沢さんが、不思議そうに尋ねた。

「テスト問題?櫛田さんと旋毛風さんが作ったの?」
『これは過去問よ。昨日の夜に、3年の先輩から貰って…ね、桔梗さん。』
「うん!一昨年も去年も、殆ど同じ問題が出たんだって。だからきっと、本番で役に立つと思うの!」

桔梗さんがお得意の笑顔を見せた途端、沸き立つクラスメイト達。
赤点組の1人である山内君なんか、無理して頑張る必要無かったと漏らしている。
没収して世間様の大変さを思い知らせてやりたいのを、寸でで堪える。
そんなことしたら、努力が水の泡だ。
勝手に出ていこうとする高円寺君にも渡そうとしたが、そんなものは必要無いと一蹴。
おまけに、これからデートの約束があるとか何とか。
ほう、大層な自信がおありのようだ。
足さえ引っ張らなきゃ、どうだって良い。

「櫛田さん。」
「堀北さんには、必要無いかも知れないけど…」

いつの間にか近寄ってきていた鈴音さんが、桔梗さんに過去問を手渡されながら何かを聞こうとする。
しかし、赤点組の邪魔によって叶わなくなってしまった。
鈴音さんを押し退けてまで言うことじゃないでしょ、もっと視野を広げなさいよ3馬鹿。
恩に着るとまで言われた私も、笑顔が引き攣らないようにするので精一杯だった。















…とまぁ、こうした私達の暗躍もあって、無事悲惨な結果からは脱却することが出来たというわけで。
一連の行動を掻い摘んで説明すると、清隆は頬杖をついて言った。

「あぁいう役割は、Aと櫛田が適任だ。」
「嫌味ね。」

茶柱先生が、興奮気味に喜ぶ私達を見ても眉1つ動かさず感心していると告げた。

「お前達が、こんな高得点を取れるとは思わなかったぞ。お前達の頑張りは認めよう、だが…お前は赤点だ。」

須藤。

名指しされ、あまつさえ自分の名前の上に赤ペンでラインを引かれてしまった須藤君。
あんなに努力しやすい土俵を作ってあげたのに、それでも点数は底上げされなかったか。
どうしてなんだと喚く須藤君に、茶柱先生が冷めきった声で赤点ラインは40未満だと告げる。
彼の点数は、39点。
1点足りなかったようだ。

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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月6日 18時

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