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SIDE 綾小路 ページ34

Aが、先に行動を起こしてくれている。
後は、櫛田と共にそちらに向かうだけだ。
櫛田に静かにするよう仕草で伝え、彼女達が座る席の近くまで寄る。
聞こえてくる会話を漏らさないよう、神経を尖らせた。

『…あ、それ。』
「…あ?」

偶然を装って近付いたAが、手にした山菜定食と先輩の顔を交互に見比べて、へにゃりと困り笑顔を浮かべた。
…あんまり、本気を出さないで欲しい。
向こうがその気になったら困るんだが。

『あの、先輩…ですよね?』
「あ、あぁ。そうだけど。」
『良ければ、ご一緒しても良いですか…?』
「構わねぇけど。」
『ありがとうございます。』

普通の女子生徒だったら、もっと不審がられていただろう。
これがまかり通るのは、相手が容姿端麗なAだからだ。
山菜定食が、向かい合って並ぶ。
Aが緩慢な仕草で、料理を口にする。
先輩が、明らかにそれに目を奪われていた。

『…これ、美味しくないですよね。』
「だよな。無料で食べられるからこれにしてるけど、ぶっちゃけあんま食べたくねぇ。」
『わぁ、分かります…!ポイントが無さ過ぎて、これしか選択肢が無いんですよね。』
「そうそう。本当はアレとか食べてみてぇよ、スペシャル定食。」
『あぁ、良いなぁ。あの海老フライとか、きっとサクサクで美味しいんだろうなぁ。』

前に俺と半分ずつ食べたことある癖に、よくもまぁいけしゃあしゃあと嘘を並べられるものだ。
我が幼馴染ながら、末恐ろしくなる。

「うわ、想像したら食いたくなってきた。」
『ポイントさえあれば、どうってことないことなのに…』

男の視線が、Aの胸に移る。
念の為、シャツの第2ボタンまで開けて話をしてくると言って笑っていたAを思い出し、そんなことはするなと言えば良かったと後悔した。
あんなの、邪念が混じるに決まっているのに。

「……あのさ、君ももしかしてDクラス?」
『はい。え、「君も」ってことは先輩も…?』
「そう!へぇ…何か共通点多いな、俺達。」
『そうですね!何だか嬉しいな。』
「…なら、さ。今度奢るから、また一緒に」

あぁ、そこから先は例え演技でも許さない。

「すいません、先輩ですよね。1年Dクラスの者です。」

話の腰を折るように、わざと音を立てて席に座る。
櫛田も、Aの隣に向かった。
いきなり相席しだした俺達を見て、Aがビクリと背中を震わせた。

『あれ、貴方確か同じクラスの…えぇっと。』
「綾小路だ、名前くらい覚えてくれ。」

先輩ともっと。→←価値を。



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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月6日 18時

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