気に入った。 ページ32
『あら、名前を覚えてくれてるなんて光栄。ごめんね、帆波さん。急に割り込んで。』
「ううん!寧ろ、Aちゃんが来てくれて嬉しかった。私一人じゃ、ちょっと不安だったから。」
『お役に立てたなら良かった。』
微笑みかける帆波さんに応えながら、私は他の男子達にも話しかける。
『乱入してごめんなさい、私はDクラスの旋毛風A。須藤君のクラスメイトとして、暴力沙汰を見過ごすわけにはいかないの。どうしても喧嘩すると言うなら、警備員を呼ぶことになるのだけれど。』
中でもリーダー格の青年が、私を横目で見つめた。
「旋毛風…と言ったな。これは喧嘩じゃない、俺達は被害者だ。」
「そう?私には、龍園君達が挑発したように見えたけど?」
龍園って言うんだ、この人。
『同感。これ以上続けるなら、学校にこのことを報告させてもらうね。』
そう言うと、龍園君は暫く考えてから歩き出した。
どうやら、須藤君イビリへの興が冷めたらしい。
こちらへ向かって歩いてくると、何故か私の前で立ち止まった。
目の前で改めて見上げると、中々に迫力のある見た目だ。
その龍園君に、上から下まで舐めるように見つめられる。
え、何?
「お前。」
『私?』
「あぁそうだ、お前だA。気に入った、また俺を楽しませろ。」
はい??
意味が理解出来なくて、目を白黒させる。
それを見て余計に面白かったのか、龍園君は薄く笑った。
そして。
『ひゃっ!?ちょっと、何するの龍園君!』
龍園君はあろうことか、私の左手を掴み取って小指に噛み付いた。
指の根元にまで歯が来ている。
しかも、結構強く噛みつかれた。
そんな深く噛むか、普通…
ギョッとしてされるがままになっていると、龍園君が口をやっと離した。
何事も無かったかのように私の傍を離れると、おい猿なんて酷い呼び方で須藤君をからかう。
「お前は、良い玩具になりそうだ。」
清隆が、こちらに向かって来る。
すれ違いざま、龍園君に意味有りげな視線を送っている。
龍園君は、使える駒…だったかな。
私に何やら興味を持たれたようだけれど、まぁそれはさして影響は無いだろう。
未だガキみたいに喚く須藤君を、清隆が押さえる。
『須藤君も、龍園君の挑発にのらないように。』
舌打ちされたが、分かってくれただろうか。
…無理かな、あの感じはまだまだ反発してきそうである。
何て手のかかる駒なんだ、メンテナンスに時間を割くのは面倒なのだけれど。
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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:桜 | 作成日時:2024年2月6日 18時