蝶は鳥にはなれずとも。 (ページ31)

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第3話。ページ31

生徒達は皆大騒ぎ、ガタガタッと椅子や机を蹴散らして桔梗さんや私の元へ駆けてくる。
わぁ、さながら飼い主の元へ走り寄る犬のようだ。

「櫛田ちゃんと旋毛風ちゃんのお陰だよ！」
「今回ばかりは、本当助かったぜ！」
「そんな、私は別に。」
『皆の頑張りが一番効果的だったんだよ、私は何も。』
「天使だ…櫛田ちゃんと旋毛風ちゃんは俺達の天使だ！！」

もう苦笑するしか無い。

「綾小路君。」

群がってくる男子達を適当にいなしていると、鈴音さんが清隆を呼んでいた。
気になったので、くるりとそちらを振り向く。

「貴方…いえ、貴方達。一体何をしたの？」

それを語るには、時系列を3日程前に戻さなければならない。

あれは、清隆と夕暮れの校舎内を歩いている時のこと。
テニス部の生徒がボールを追いかけているのを見た私は、隣を歩く清隆に問いかけた。

『ねぇ、清隆。』
「ん？」
『清隆は、部活入らないの？』
「今のところ、考えてないな。」
『勿体無い、清隆の実力があれば何処でも引っ張りだこなのに。』
「それはお前もだろ。」
『あはっ、まぁね。』

何てったって、私達だもんね。
そんなことを言い合って笑っていると、遠くから怒号が。
この感じ、デジャヴだ。

「憐れな程、醜い生き物だな。」

見ると、図体の大きな生徒達に囲まれて須藤君が喧嘩を買っているようだった。
何してるんだ、あの人。
前にも同じようなことあったのに、まだ懲りてないの？
学習しない馬鹿は嫌いよ、私達の足を引っ張らないで。

「櫛田に頼まれて、勉強会に誘いに来たんだが…」
『あれじゃあ無理ね。』

今にも大喧嘩が始まりそうだ。
一触即発の雰囲気を何をするでも無く眺めていると、よく通る女子生徒の制止の声がした。
あれ、帆波さんだ。

「部外者は黙ってろ！！」

須藤君が噛みつく中、清隆が私の背中を押す。

『…ん？なぁに清隆。』
「Aも行ってこい。」
『え、目立つことはしない方が。』
「いつもは、な。だが、あいつらはこの先も利用するかもしれない。顔を売っておくに越したことは無いだろう。いけるか？」
『清隆が言うのなら、私は何だってするよ。』

他の誰でも無い貴方に頼まれたのなら、やるしか無い。
私は、腕を組んで仁王立ちする帆波さんの傍へ近寄る。

『部外者じゃない、クラスメイトの私も居るよ。』
「なっ、テメェは…旋毛風。」

須藤君が、少しだけ怒りを忘れたような顔で私を見る。