蝶は鳥にはなれずとも。 (ページ30)

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消毒。ページ30

清隆も、一緒になって屈んでくれる。

「よく耐えたな、A。」
『う、うん…』

伸びてくる右手、あれをもろに受けていたなら。
背筋に、寒いものが走る。
あの動きは、間違い無く有段者のそれだ。
首筋か、はたまた頭か。
何処を狙われていたのかはこの際どうでも良いが、どれをとっても私が怪我を負うことは避けられなかったと思う。
清隆がベストなタイミングで助けに来てくれて、本当に良かった。

「もう力を抜いて良いぞ、怖かったなA。」
『清隆のお陰で、すっかり脱力しちゃった…』
「それなら良かった。」

清隆が、優しく頬を撫でてくれる。
それに擦り寄って安堵のため息を零すと、清隆が私をひょいと横抱きにして持ち上げた。
甘えていると、風呂場に連れて行かれる。
え、お風呂？

『清隆、私着替え持ってきてないよ？』
「俺の服があるだろ、それ着てくれ。」
『タオルも無いし。』
「俺の部屋の予備がある。」
『清隆が先に…』
「それよりもまず、Aの消毒が先だ。」
『消毒！？』

私そんな汚い！？

「あの会長に触れられただろ、上書きする。」

あぁ、消毒ってそういう…

『いや待って納得しちゃ駄目！！』
「服はこっちに置いておく。別に何も着てこなくても良いが、それだとあまりこちらも保たないから気をつけろ。」

保たないって何、何が保たないの。
自制心？？理性？？

『清隆、私達明日も学校だよね…？』
「関係無い。」

あるよ、大有りだよ馬鹿。
けれど結局、あの清隆に言葉で勝てる訳も無く。
大人しくお風呂を先に頂いて彼シャツ状態になった私は、待ち構えていた清隆に『消毒と、夜に1人で出歩いた罰』を受けることとなった。

腰痛い…

そうして、絶望的な状況の中でその日を迎え。
私達Dクラスの全生徒は、各教科全てにおいて高得点を獲得していた。