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兄さん。 ページ27

壇上で堂々たる挨拶をしていた、彼女とよく似た顔立ちの生徒会長。
まさか…ね。

「すぐに、Aクラスに上がってみせます!そうしたら…!」
「無理だ。」

少しだけ苛ついた。
誰だか分からないけれど、あの鈴音さんが普段見せないような必死な声で縋り付くように訴えている。
きっと、彼女自身も彼に萎縮している。
そんな少女の精一杯の言葉を、あの男は全くもって聞き入れようとしない。
融通が利かないというのか、せめて聞く耳くらいは持ってやれば良いものを。

「絶対に…辿り着きます。」
「聞き分けの無い妹だ。」

男性が振り返る。
やはり、生徒会長だった。
レンズの奥の瞳が、凍てつくような冷たさを含んで鈴音さんを睨みつける。
似ている…あの表情なんて、兄妹そっくりだ。
一瞬考え込んだ刹那、生徒会長が動いた。
かなりの素早さで鈴音さんの右手首をガッチリ握って、壁に押し付ける。
成す術無く、鈴音さんは壁に叩きつけられた。

「Dクラスに振り分けられた妹、恥をかくのはこの私だ。今すぐ、この学園を去れ。」
「兄さん…私は。」
「お前には、上を目指す力も資格も無い。それを知れ。」

鈴音さんが弱々しく生徒会長を見上げるも、会長はそれを遮って更に言葉をぶつける。
彼の右手が、腰の辺りで引かれている。
まずい、と思った瞬間私の身体は動いていた。
鈴音さんは、これからのための重要な駒。
今ここで傷をつけられて、退場されても困るの!
バシッと音を立てて、生徒会長の右腕を掴む。
鈴音さんが、驚いたように声を上げた。

『貴方、今本気で打ち込もうとしていたでしょう。鈴音さんを離して。』

しかし鈴音さんは、掠れた声でやめてと告げる。
街頭に照らされてやっと見えた鈴音さんの表情は、緊張からかかなり青白く、風が吹けば倒れてしまいそうな程に華奢で頼りなく感じられた。
そういう顔は、初めて見たな。
元は兄妹同士の小競り合いだ、あまり深く首を突っ込むのも野暮だし面倒臭い。
素直にその手を離した。
と思ったら、その手が握り締められて飛んできた。

『わっ!?』

こいつ死角の位置は見えていない私に向かって、今本気の握り拳ぶつけようとした!?
辛うじて視界に入っていたのでギリギリで躱すと、今度は会長の左足が伸びてくる。
右にずれて何とかやり過ごすが、何と早い蹴りだ。
私と清隆じゃなきゃ受けちゃうね。
会長が目を見開き、改めてポーズを取った。
ちょっと待って、ここで一試合おっ始める気?

バイオリンと。→←本当は何を。



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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月6日 18時

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