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本当は何を。 ページ26

言いかけた彼女は言葉を一度区切り、そして続けた。

「いいえ、貴女本当は何しに来たの?」
「え?」
「私の邪魔をするために来たの?」
『鈴音さん。』

これ以上言うとやり方はともあれ助力してくれた桔梗さんが何を言い出すか分からないので、仕方無く口を挟む。
しかし既に遅かったようで、桔梗さんは悲しそうに俯いて図書室を足早に出ていった。

『鈴音さん。貴女の物事の伝え方に難癖をつけるつもりは一切無いけれど、多分少し方法を変えないとこの先何も成り立たなくなるよ。』
「…」

私の言葉にも、鈴音さんは反応しなかった。
どうしたものか。
頭ごなしにアドバイスをしたとて、それを素直に聞き入れる彼女とは思えない。
何なら、逆に怒りを増大させてしまうだけだろう。
ならば、ここは敢えて突き放すしか無い。

『清隆、帰ろう。』
「…あぁ。」

清隆は、何か考えている様子だった。
私に出来ることは、一体何だろう。


















部屋に戻り、ぼーっと壁を眺める。
明日の準備も食事の支度も、何もかも終えてしまった。
後は眠るだけである。
けれど、何もしないってのも味気無いな。
それに、先程のことが頭を巡ってどうにも落ち着かない。
 
『…気晴らしに、外で散歩でもしようかな。』

清隆に見られたら、めちゃくちゃ怒られるけれど。
大丈夫だよね、夜道で襲われそうになっても返り討ち出来るくらいには鍛えられているのだから。
そう自分に言い聞かせて、私は端末だけを手に部屋を後にした。

寮の前の自動販売機辺りまでやって来た時、薄暗い通路の奥から男性の声と思しきものが響いた。

「鈴音、ここまで追ってくるとはな。」

静かな夜道だから、余計に大きく聞こえる。
しかしその声は、鈴音と言った。
鈴音って、私の知ってる鈴音さんのことだろうか。
好奇心に抗えず、そっと奥を覗き見る。
夜闇に紛れているため誰かは分からないが、シルエットから察するに男女1人ずつ。
やがて、人影の片方が僅かに動いた。

「もう、兄さんの知っている頃の駄目な私とは違います。追いつくために、来ました。」

この声……鈴音さんだ。
じゃあやっぱり、先程男性が口にした「鈴音」というのは鈴音さんのことで間違い無いのだろう。
もう1人って、一体誰?
今、「兄さん」って…。

「追いつく、か…お前は今もまだ、自分の欠点に気付いていない。この学校を選んだのは、失敗だったな。」

兄さん、という言葉からとある人物の顔が浮かんだ。

兄さん。→←見捨てたくない。



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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月6日 18時

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