蝶は鳥にはなれずとも。 (ページ21)

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意外。ページ21

「…お昼、暇？」
「ん？」
「もし良かったら、一緒に食べない？」
「……え？」

え？！
清隆が、珍しく本気で驚いている。
私も意外過ぎて、頭が追いつかない。
一緒に食べない？って…誘われた。
鈴音さんが、端末を片手にこちらを伺い見ていた。
その視線が、こちらにも向く。

「貴女もよ、旋毛風さん。」
『私も？』
「えぇ。先約が無いのなら、来て欲しいのだけれど。」
『まさか、先約なんて無いよ。行こう、鈴音さんとご飯食べるの初めてだから楽しみだな。』

一体何が起こっているのか。
驚愕と共に、少し顔を覗かせる好奇心。
それらに蓋をして、人畜無害にニコリと笑って見せる。
滅多に無いこの機会に、少しでも貴女の本性を見せてもらおうじゃない。

外界の光が溢れんばかりに注ぎ込む食堂は、今日も今日とて混み合っていた。
おっかなびっくりな様子(それでも外野からはとても分かりにくい)の清隆と、素知らぬ顔で進む鈴音さん、そしてそこに引っ付いている私。
端から見たら、清隆を取り合う女同士の醜い修羅場にでも見えているのだろうか。
だとしたら、私と鈴音さんは恋敵…？
いかん、意味が分からな過ぎて笑えてきた。
鈴音さんは何を考えたのか、私と清隆にランチをご馳走すると言い始めた。
私達は別にポイントで困っている訳では無いけれど、鈴音さんはやたら私達に奢りたいようだ。
声をかけてきた時も、鈴音さんは既に端末をその手に持っていた。
始めから、これが目的…？
違和感や疑問点は多く残るが、向こうがそこまで言うのなら奢られるべきだろう。
素直に豪華な昼食をご馳走してもらい、長机に3人並んで腰を落ち着ける。

「本当に良いのか？」
「えぇ。何でも好きなものを食べて構わない、って私が言い出したんだもの。」
『それはそうなんだけど…』

さっきから、鈴音さんの視線が痛い。
両手を顎の下で組んでこちらを穴が開く程見つめる鈴音さんの視線に耐えかねたのか、清隆がパチクリと瞬きをして彼女を見つめ返す。
私も、ホカホカの味噌汁を両手で包みながら清隆の向く先を見る。
鈴音さんは、涼しげな顔でこちらを促した。

「どうしたの？綾小路君達。早く食べたら？」
『う、うん…じゃあ、頂きます。』

ずず…と啜った、汁物のあたたかさに息を吐く。
清隆も、良い音を立てて海老フライに齧り付いた。

「早速だけど、話を聞いてもらえるかしら。」

え？
唐突に始まった一方的な話し合いに追いつけず、噎せそうになるのを何とか堪える。