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第2話。 ページ18

燦々と太陽の光が降り注ぐ、穏やかなこの日。
私達は水着に着替えて、水泳授業に勤しんでいた。
と言っても、自由時間なので皆好き勝手遊んでいるが。
私は大して水泳授業が好きではないので、清隆が腰掛けるプールサイドに背中を預けてプールの中で立っていた。
一応これでも、やってるってアピールしておかないとね。
その整ったスタイルを晒すな、と清隆にこれでもかと釘を刺されているので、大人しく水をぱしゃぱしゃと動かして適当に時間を潰している。
ていうかスタイル晒すなって私には言うけど、清隆だってその見事に均等の取れた筋肉質な上半身出してるじゃない。
項にキスマークつけられそうになって何とか押し留めてやめてもらった昨日のこと、まだ忘れた訳じゃないんですが。
不公平だ、という気持ちも込めて清隆を下から睨めつける。
当の本人は、何を考えているのかため息を吐いていた。

「何を黄昏れているの?」

見事なまでの美しいスタイルを、惜しげも無く晒す美少女。
鈴音さんだ。
最近、向こうから話しかけてくることが増えた鈴音さん。
一体どんな心境の変化なのやら…悪いことじゃないから、別に良いけれど。

「己との戦いに、没頭していたんだ。」

何してんのこの最高傑作は。

「あんなことがあったばかりなのに、誰も彼も呑気なものね。」
『気を紛らわせたい…ってのも、あるんじゃないかな。』
「…そういうものかしら。」
『そういうものよ。』

私は知らないけど。

「春先いきなりのプール授業…しかも大半が自由時間となれば、多くの高校1年生ははしゃぐんじゃないか。」
「まるで小学生だわ。けれど、最悪とも思えない。Sシステムによれば、彼らは最悪の不良品。」
『…他人事じゃないんじゃない?』
「…えぇ。」

2人の会話を聞きながら、茶柱先生が私達にした説明を今一度思い出す。
あの苦々しい教室の空気、こことは大違いだ。
きっと清隆の言う通り、彼ら自身も気を紛らわせたくてあそこまではしゃいでいるのだろう。
現実逃避は、時として精神の安寧をはかってくれる。
私達は一ヶ月で、何の価値も持たない不良品であることを数値でもって自ら証明してしまったのだ。
誰もが俯いて焦る中、拍手の音が響く。
茶柱先生が、冷笑を浮かべて手を叩いていた。

「しかし、逆に感心もした。一ヶ月で全てのポイントを吐き出したのは、歴代のDクラスでも初めてだ。」

微塵も感じられない称賛の言葉に、余計羞恥と焦燥が増す。

即退学。→←評価0の。



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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月6日 18時

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