蝶は鳥にはなれずとも。 (ページ17)

今日:112 hit、昨日:103 hit、合計:63,913 hit

評価0の。ページ17

あり得ない。
正に、その一言に尽きる。
ほんのちょっと前まで中学生だった私達に、毎月10万ポイントが支給される？
常識的に考えればそんなことがある訳も無い事くらい、分かる筈だった。
けれど彼らは、そこまで考えを及ばさなかった。
ただ目の前にぶら下げられた大量の人参に食いつき、その先のことを想像しようともしなかった馬である。

「何故、疑問を疑問のまま放置しておく？入学式の日にも言っただろう、この学校は『実力で生徒を測る』と。」

そう。
先生を含めた学校は、何も私達に意地悪をしていたわけじゃない。
寧ろ、ヒントをくれていた。
堀北生徒会長や茶柱先生は、この学校の仕組みをしっかりと説明してくれていた。
そして敷地内にも、ヒントは沢山転がっていた。
コンビニで目についた無料の商品、食堂で出る無料の山菜定食…どれもこれも、学校側から与えられていた。
けれど、それらには見て見ぬ振りをした。
いや、もしかしたら気付いてすらいなかったかも知れない。
何故なら、今の生活には必要無いからだ。
何で無料の商品なんてあるんだろう。
その程度だったのだろう。

何故、疑問を疑問のまま放置しておく？

そのとおりである。

私達が人間である以上、決して考えることを怠ってはならないのだ。
先生は俯きがちだった顔を上げ、私達を鋭い視線で刺す。

「お前達は評価0の、クズというわけだ。」

これは、そんな圧倒的実力至上主義の教室へ入学した、私達の物語だ。