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---SIDE 綾小路 ページ16

迎えた5月1日。
その日は、鈍色が空一面を覆い尽くすような芳しくない天気だった。
生徒達は、皆揃いも揃って怪訝そうな顔で互いに顔を突き合わせている。
話題になるのは、全てポイントのことだ。
振り込まれていない、と不満を零している。
俺も、自分の端末の数字が昨日から変動していないことを確認する。
暫くすると、クラス内の色々なグループを回って情報を聞き出してきていたAが返ってきた。
その表情は困惑したものを作っているが、きっと心の内では『それ見たことか』とほくそ笑んでいるんだろう。
相変わらず、恐ろしい幼馴染だ。

『清隆。』
「どうだった?」
『やっぱり想像通りのことが起きてるね、こりゃ今日のHRは荒れるぞ〜。』
「A、本心が出てる。」
『おっと!こりゃあいけない。』

照れたように舌を出して笑うAに、したたかだなと声をかけようとした時。

「席に着け、朝のHRを始める。」

担任の茶柱が手に何かを持ち、教室の扉を開けた。
空気が多少なりとも入ったであろうにも関わらず、どうにも晴れない教室の淀んだ雰囲気。
息がしづらい。
山内が早速手を上げてポイントが振り込まれていないことを伝えるも、茶柱は淡々と否定。
当惑する生徒達を他所に、茶柱は念を押すように同じことを繰り返す。
このクラスだけ忘れ去られている可能性も全否定、となると俺達の読みは当たっていたようだ。
Aが、こちらを一瞬だけ見る。
目元は一切笑っていないが口元だけが奇妙に歪んだ冷笑を浮かべて、口パクで呟いた。

『ばぁか。』

あぁ、俺も同感だ。




「本当に愚かだな、お前達は。」

茶柱が、種明かしを始めた。
この一ヶ月だけでカウントされたとは到底信じ難い、怠惰の数々。
それらが支給されるポイントに、影響をもろに及ぼす。
ゲーム機を自慢気に見せていた誰かが、ギリリとそれを握りしめる。
お遊戯道具に、随分と高額なポイントを消費したものだ。

「ただの高校生に過ぎないお前達が、何の制約も無く毎月10万も使わせてもらえると、本気で思っていたのか?」

隣の堀北を見ると、真剣にメモを取っていた。
Aの言うとおりだ、堀北鈴音は使える。
この状況で絶望せず、たとえしていてもすかさず今出来ることを判断して行動に移す。
阿呆みたいに口だけ開けて話を聞いているだけの生徒達とは、やはり違う。

「あり得ないだろう、常識で考えて。」

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れい(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新頑張ってください (2月18日 12時) (レス) @page24 id: 774cbd6690 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2024年2月6日 18時

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