18・くったり ページ22
玄関のベルを鳴らすと、ほどなくしてドアが開く。
「あら、思ったより時間がかかったわね。おかえりなさい。」
「うん、ただいま。」
割と最近までこの家で生活していたはずなのに、母との玄関でのやり取りがなんだかとても懐かしく感じた。
それだけ、ひとりぐらしの生活に慣れてきているということなのだろう。
「はい、これお土産。」
「あら!そうそうこれが食べたかったのよ〜。ありがとうね。」
「いえいえ。」
頼まれていた東京土産を手渡す。
その瞬間、母の視線がかごバッグに入っているもふもふ達に釘付けになったのがわかった。
興味深々でもふもふ達を眺める母とは対照的に、私の手元にいる彼らはかなり緊張しているのが伝わって来る。お願いだから動かないでくれよ!もふもふ達よ!
「それもお土産?」
黒い子が冷や汗を流しているのを視界の端で捉えながら、私は用意しておいた文句を放つ。
「これはあたしの好きなバンドのレアグッズなの!!!下宿先に置いていくのがしのびなくて・・・!」
最後の方、少し声が上ずったけれど、わたしにしてはよくできた方だろう。
しかし言い訳がだいぶ苦しいか・・そう思いながらバッグからおそるおそる目を離し、顔を上げる。
「へぇ・・・そうなの。」
だいぶ引きつった笑い方を母の姿がそこにはあった。
そんな目で見ないでいただきたい。でも彼らのためならば、耐える!
自分の部屋は、この前出てきたときのままだった。
勉強机に洋服箪笥や本棚その他諸々が、おなじみの配置で置かれている。
部屋に入るなり、窓を閉め、クーラーの電源を光の速さでつけた。
そう、わたしは何より、もふもふ達の体調が心配だったのである。
カーテンを閉めたり、部屋の外に特にだれもいないことを確認したりしてからようやく、わたしは彼らをバッグから出してあげることができた。
「もう動いて平気だよ〜。みんな大丈夫?暑かったよね?」
ひとりひとり、手に乗せて出してあげる。
「ぶろっ!」
早速ミドリくんが、大丈夫元気だよ!とアピールをしてくれるのだけど、他の子達は、きっくん以外はくったりしているようだ。
やっぱり長時間移動は疲れるもんね。
手に乗せたときにも思ったけれど、いつもより体温が高かった気もするし。
とりあえず、わたしを安心させてくれようとしてくれたミドリくんをひと撫でしたあとに、わたしは冷たい水分とおやつを取りに部屋を出たのだった。
「ちょっとまっててね。」
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ea - 早く、続きが見たいです!。 (2018年5月20日 21時) (レス) id: 2c6262ea33 (このIDを非表示/違反報告)
飼育員B(プロフ) - コメント失礼します。いつもこの小説に癒しをもらっています。先生が好きなので、般若くんが人間に戻る時にニヤニヤさせてもらいました。← これからも、更新頑張ってください。 (2015年9月13日 17時) (レス) id: a1d9ad5f25 (このIDを非表示/違反報告)
猫苺(プロフ) - 26話で見たい動画を見たい時のアピールの仕方 ミドリくん・黒くん・般若くん(手でペチペチ) アルパカくん(頭でゴスゴスゴス!)こんな感じなんでしょうね(笑) (2015年9月13日 15時) (レス) id: c342f71c4d (このIDを非表示/違反報告)
レオン(プロフ) - コメント失礼します…えっとすごく場違いな気しかしません(すごい作者さんばかりで)でもとにかくぶろっちょの必死なところとか可愛いなって思ったりして読ませてもらってます! (2015年9月13日 0時) (レス) id: c7e9f97efd (このIDを非表示/違反報告)
餡子らーめん(プロフ) - 弥燗邪夢@まふ君依存症。さん» 応援コメントありがとうございます♪ そうなんです。ぶろっちょの見せ場がどうしても多くなってしまうんです笑 ふぶくんの株がこれで上がるなら私は喜びます← 応援とっても励みになります!最後まで書ききれるように頑張っていきますね♪ (2015年9月8日 23時) (レス) id: b3e1ed8c43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:餡子らーめん | 作成日時:2015年4月30日 22時