カロリー気にしてたら飯食えない。 ページ30
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「んで……理由、教えてよ」
結局、どうして花巻に嘘をつかせたのか、という質問に対し、電話で岩泉が答えてくれることはなかった。
[……その質問には、ちゃんと答える。でも、面と向かって言いてえ。から、今日の昼休みでもいいか]
今日の昼休み。そう言われて電話を切られた。今日は実際、学校に行くか行かないかで迷っていた日。
いや、受験生だから行かなきゃダメなんだろうけど、この目の腫れはどうにもならない。
とにかく急いでベッドから起きて、目の腫れをどうにか出来るところまでどうにかして、今日は学校に来た。
みんなたいして私の目など見ていない。そう言うように、周りは何も言ってこなかった。いや、逆に幸いだった。
どうしたの、と聞かれる方が面倒だし。
そして今、弁当を持って屋上まで上がり、昼を岩泉と一緒に食べ、冒頭の問に至る。
謎でしかなかった。
花巻に嘘をつかせる理由が、どこにあるのか。
座ったまま向かい合い、岩泉の目を見つめる。
長い沈黙。
俯いていた顔を上げ、岩泉がそっと、言葉を紡ぎ始める。
「……お前を、死なせたくなかったから」
端的に、かつ淡々と。
岩泉は溜めてた割にあっさりと理由を述べた。
死なせたくなかった。
そんな言葉、理由にならない。
なんて、普通の人なら怒るのかな。
でも。
「私が、好きな人にフラれたくらいで死ぬ人間に見える?」
「あたりまえだろ。お前、今にも死にたい、って言ってたくせに。そんな奴がフラれたら、すぐ死ぬに決まってる」
正論。
ド正論にしてド迫力。
いや、まあそうなんだけど、と言葉を濁らせる。確かにそうだよ?そうなんだけどさ。
……あれ、でも待って、岩泉。
「岩泉、あんた……私に、死んで欲しくないって思ったの?」
"死なせたくなかった。"=死なれたくない。
式が成り立ってしまうじゃないか。
だって、え?いや、まあ確かに、9月1日に死ぬこと自体は止められたけど。
「……嗚呼」
意外。いや、情に厚い男だ、岩泉一は。でも、でもさ。
「なんで?只のクラスメイトだよ?」
死なれたくないからって、わざわざ友達に根回しまでする?
私だったら絶対にしない。その友達にも嫌われるかもしれないのに。
「……俺にとっては、只のクラスメイトじゃねえから」
無愛想に、目を逸らしてそう言った岩泉の耳がほのかに赤く染まっている。
疑問符が頭に浮かぶ。
只のクラスメイトじゃない。
その一言が、脳裏を支配する。
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー! (2023年2月18日 22時) (レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです! (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ!こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます!感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります!本当にありがとうございました! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね!気付きませんでした!今度検索してみますね!コメントありがとうございます! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お水。 | 作成日時:2019年1月12日 17時