死にたがりの君。 ページ18
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数日後。
放課後。
好きな人と、岩泉が目の前に。
「うし、じゃあ告れ」
「……は?」
いや、花巻を前に告れとはどういうこと。
「かつて夏目漱石はI love youを月が綺麗ですね、に例えたと言います。この他にも自分の心を隠した言い方は多数存在し、男女間でよく用いられます」
長ったらしい先生の説明。
果たして授業の内容に関係があるのかは別として、今の私には充分興味深かった。
そして。
黒板を見ていると目に入る、私の属する三人グルの二人。
二人は席が近いから、仕方がないんだろうけど。
仲間外れ感があって、なんか、嫌だ。
「……死にたい」
ポツリと呟いた一言。
静かな教室には響いてしまうかと思ったが、そうでも無いらしい。隣の男子に、ん?何?と聞き返されるだけで済んだ。
なんでもないよ、と笑顔を見せて、いくらか自分の顔がマシに見える程度に口角をセットする。
そか、なんて男子も笑って。
平和解決。
……I love youを月が綺麗ですね、か。
夏目漱石は随分とロマンチックだったんだな、なんて、変な感想を零して。
授業が終わるのを、ひたすらに待った。
授業終了と同時に、携帯が光る。
そこには。
"今日の放課後、花巻連れてくから告れ。"
の文字。
固まる。
いや、だってそうでしょ?
急に告れなんて、意地が悪いと思いません?
ねえ岩泉。
あんた、何考えてんのさ。
とは言え、嫌だと通しても既読無視する岩泉を放っておく訳にもいかない。
花巻を連れていくとか勝手なことを言う岩泉を止められるほど、私に力はない。何をしでかすか分からない岩泉に対する緊張で心がやられそうだった。
足取りは思いまま、屋上の階段を上る。
「お、湯川」
……。
ガシャン。
「え、ちょ、おい!?」
なんだ、え、え?
屋上の扉を開けた途端、花巻がこんにちはしてたよ。
驚いてすぐに扉を閉めたけど。
え?
ってか岩泉いた?
いや、いたな。多分花巻に隠れて見えなかっただけで、指先は見えた気がする。
未だガンガンと扉を叩く花巻にため息を吐き、一気に扉を開けた。
「うわ。ビビった」
「……そりゃこっちのセリフ。やほ、花巻」
「やほ」
平常心を保って、屋上に出る。
仁王立ちする岩泉。
その顔はどこか険しく、そして、何かを覚悟したような顔。
「うし、じゃあ告れ」
……そして、冒頭に戻る。
「……は?」
意味不明ってより謎ってより意味不明。
今ここで告れってことですか。
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー! (2023年2月18日 22時) (レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです! (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ!こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます!感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります!本当にありがとうございました! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね!気付きませんでした!今度検索してみますね!コメントありがとうございます! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お水。 | 作成日時:2019年1月12日 17時