こんにちは悪役。 ページ17
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岩泉side
｢……分かってるってば｣
喉が、音を立てた。
嫌な音。
それに比べて空は眩しいくらいの晴天で。
劣等感に苛まれてしまうぐらいには、太陽が照っていた。
俺の目を見て、眉を下げ、困ったように笑う湯川が。
酷く、儚くて。
嗚呼、やっちまった、なんて思うには充分な表情だった。
何か。
何か言わねえと。
こいつを傷付けた。今でさえ傷付いてるこいつを、傷付けた。
死んじまうかもしれねえ。
嫌だ、嫌だ。
……嫌だ？
嗚呼、まあそうか。クラスメイトが死ぬのは誰だって嫌だから。
いや、違う、もっと、こう。
別の、何か。
｢応援、してやるよ｣
声が上ずった。
急に出た、考え無しの一言。
応援なんて、本当はしたくもねえよ。
それが言えたら、どれだけ、幸せか。
｢……え｣
｢花巻と同じ部活で、同じスタメン！仲もいい、はずだし。仲を取り持つぐらいなら、出来るっての｣
取り持つなんて、したくねえよ。
でも。
言ったそばから顔を明るくしたお前に、そんなこと、言えねえよな。
なあ、湯川。
｢……じゃあ、それなら、まずは連絡先が、知りたいです｣
顔を赤くして。
嬉しそうに顔を綻ばせて。
嗚呼。
｢……おう、任せろ｣
まあいいか。
こいつが死なねえなら、もう、なんでもいい気がしてきた。
死ぬことなんて忘れてはしゃぐこいつの瞳が、すごく。
嬉しそうだから。
最近エナメルバッグにシュークリームを二つ入れて、早めに部活をあがるアイツのことは。
いつもより身だしなみに気を付けて、バスの定期を持ってどこかに立ち寄っているらしいアイツのことは。
言えない、ままで。
……ひょっとしたら、本当に叶わねえ恋かもしんねえのに。
｢……はは、なんか、気持ち悪いね。
こんな、重い恋愛みたいな。あー、なんだかんだ初だよこういうの｣
目を伏せて。
湯川の呟きを聞く。
｢岩泉は引くような奴じゃないから言うけど、今結構舞い上がっちゃっててさ。
ほんと、ブスが調子乗んなって感じなんだけど｣
嬉しそうな声のトーン。
本気で好きなのが伝わってきた。
高校に入って、本気の恋愛をする奴なんて随分減ったから。
こういうのは、新鮮で。
……酷く、俺の心をえぐる。
｢あー、やばい。岩泉に相談して良かったかもしれない。
……すごく、幸せ｣
激しい劣等感。
俺じゃ、お前をそんな顔には出来なかったのに。
｢……良かったな｣
飲み込んだ、一言。
"俺じゃ、ダメですか。"
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー！ (2023年2月18日 22時) (
レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです！ (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ！こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます！感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります！本当にありがとうございました！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね！気付きませんでした！今度検索してみますね！コメントありがとうございます！ (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：お水。
| 作成日時：2019年1月12日 17時
