何気ない憂鬱感。 ページ8
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朝。
拝啓、岩泉。
私は今、屋上のフェンスに腰掛けています。
今、手を離して、体を傾ければ、私は、死ねる。
けどまあ、約束は約束ということで、なんとなく、バレー部には朝練があることを知りながら、朝もここにいます。
……もうすぐ、予鈴がなる。
HRが始まる時間だ。行かなきゃ。
フェンスを飛び越えて、屋上の、安定した床に着いた。
ズルズルと、思い脚を引きずる。
文字通り、後ろ髪を引かれたような気がして。
「……今日も、学校だ」
ドアの近くに置いたバックを、拾い上げる。
昨日の帰りに交換したアドレスから、メッセージが来ていた。
[死んでないか?]
……文面だけ見ると、どんなカオスだよ。
笑えてきてしまって、誰もいない屋上で1人。笑いまくる。
[おい]
立て続けに来るメッセージは、返事を促すものばかりで。
どんだけ、死なれたくないんだよ。
なんて、また大笑い。そりゃそうか。後味悪いしね、死なれちゃ。
取り敢えず、返事する前に早く教室行かないと。このままじゃ、遅刻扱いだ。階段を駆け下りて、廊下を走る。賑わう廊下の、人の声が、煩わしくなる。
自分のクラスの前で急激なブレーキを掛けて、ドアを開ける。
「おはよー」
ヘラっと、軽く笑って、手をかざす。
簡単に返してくれるクラスメイトの中で、一人、息を呑んだ奴がいた。
「はよ、岩泉」
「……おう」
普段学校生活であまり話したことがないから、周りの男子は、珍しそうに挨拶をしてくる。
適当に返して、睨みつけられている岩泉のおっかない顔を無視して、いつもの、二人の所へ向かう。
「おはよー、二人共」
「ん、おはよーAー」
「はよー」
自分の席に行って、鞄を片付け、席に着く。
相変わらず仲が良い二人は、二人だけの世界で、話し込んでしまっているから。あれに入り込むのは、ちょっと疲れるな。
……あ。
ほら、今。疲れた。もううんざりだ。
死にたい。って、思った。
岩泉に理由を聞かれた時は、これを糧にしてしっかり言わなければ。
なんて、昼か放課後かの計画を立てる。
放課後は岩泉が部活だろうし、昼休みかな。
やっと死ねる。やっと、やっとだ。
しかも、岩泉もいるから心強い。
そう言って笑顔になる私はやっぱり、狂ってしまったらしい。
……でもさ。
時々思うんだよね。
この視界の中が、フィルムみたいに別世界に変わってしまっても、おかしくはないんじゃないかって。
ちょっと厨二っぽいけどさ。
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー! (2023年2月18日 22時) (レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです! (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ!こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます!感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります!本当にありがとうございました! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね!気付きませんでした!今度検索してみますね!コメントありがとうございます! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お水。 | 作成日時:2019年1月12日 17時