綺麗なままで。 ページ5
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「……そんな顔、しないでよ。何も、別に岩泉に迷惑かける訳じゃないでしょ。
だから、そんな、泣きそうな顔、しないで」
今にも、ボロボロと涙を零しそうな岩泉。
手が震えて、過呼吸になりそうだ。
うわ、死ぬ前に男泣かせるのはなんかな。
「な、んで!!なんで、お前が!なんで、今日!!な、んで……」
必死に、嗚咽を漏らしながら、喉から言葉を出す岩泉。
思えば、岩泉のこんなカッコ悪い所、初めて見るかもしれない。
冥土の土産には丁度良いかな、なんて。
「なんでかな。はは、私にも分からないよ。理由が無きゃ、死のうとしちゃいけない?
いじめられてもいない、
複雑な家庭環境がある訳でもない。
只、学校生活に疲れただけ。
それじゃ、ダメ?」
部活も、それなりに終えて、引退済み。
受験だって、上手く行きそう。
何も、不安なことがない。
だから。
「何も、やり残すことがない、この綺麗な状態の私で、死にたい」
今日の朝は、少し、髪型に気合を入れてきた。
いつもなら適当な身だしなみも、優等生ともとれるような格好にして。
顔面は仕方がない。元から恵まれてないんだから、今更足掻いてもね。
少しずつ、足をフラフラと動かして近付いてくる岩泉が、少しだけ、怖い。
だって。
急に、笑顔になったからさ。
「……なら、彼氏は?お前、いた事ないだろ?」
「なんで決定なのさ、腹立つ。まあ、良いのよ、彼氏とか、そこら辺は」
「じゃあ、勉強は?学年一位とか、取ってみたくないか?」
「別に。こんな名門校で一位なんて、取れる訳がないでしょ」
「じゃ、あれだ。腕相撲大会とか!!
あれ、普段は男子しか参加出来ねえから、剣道部の意地を見せられないとかって、言ってた、よな、お前」
心が痛い。
「もう、いいよ。岩泉。もう、やり残したことないの。この毎日に飽き飽きなんだよ。毎日、飯食べて、学校に行って、家に帰って勉強して……の、循環。
つまんないじゃん。疲れるじゃん。毎日毎日、クラスメイトの機嫌伺って、上の方のイケイケ女子に合わせなきゃいけなくて。
それなのに、裏では悪口言われて、私自身も言って。
なんかさ、もう」
" 死んでも悔いはないんじゃないかって。"
その一言を聞いた岩泉が、怖い顔して近付いてくる。
「簡単に死ぬって言うな!!」
流石は腕相撲大会チャンピオン。
簡単に、フェンスの上から、屋上の床に戻された。
乱暴に尻を叩きつけられて、痛む。
「……何、すんのさ」
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー! (2023年2月18日 22時) (レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです! (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ!こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます!感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります!本当にありがとうございました! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね!気付きませんでした!今度検索してみますね!コメントありがとうございます! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お水。 | 作成日時:2019年1月12日 17時