苦しげに。 ページ34
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午後の授業、1限目終了のチャイムが鳴る。全く集中出来なかった数学の授業。受験生として良いものか、という意見はやめてほしい。今回のは私は悪くないよ、多分。
頭から離れないあの表情と、あの言葉。
花巻に対してとは別の感情が、私の心を揺さぶっていた。
相変わらず3人グループの2人組は仲良しで、それを横目に、2人の更に向こうにいる岩泉を見る。
まるで何も無かったように男子と話す彼奴は、きっと、私の胸中など知らないだろう。
いや、知って欲しくもないけど。
このままでは埒が明かない。
話しかけに行こう。そう思い、席から立ち上がる。
すると、同じタイミングで、岩泉も席から立ち、どこかへ行ってしまった。
私の方を一度見てから。
流石に頭に来た私は、ドアを勢いよく開けて廊下を見渡す。……どこにも、いない。
「ねえ、岩泉は?」
先程まで岩泉と話していた軍団は、私を物珍しそうに見て、首を振った。
知らない、と。
適当に礼の言葉を述べて、廊下に出る。見慣れたピンク頭を見つけて、その後を追いかける。ピンク頭に隠れていた黒髪長身男も一緒にいたけど、まあ、こいつは顔見知りだし。
「松川、花巻借りるよ」
「お、A。良いよ」
「は、ちょ、湯川!?」
花巻の背中を掴み、引きずって水道の方へ。
松川とは1年で同じクラスだったから、それなりに仲は良い方で。
驚きの声が止まない花巻に、うるさい、と一言述べ、面と向かう。
「ったく、なんだよ、急に」
私を振っても尚、何も気にせずに、いや、気にしていないように振る舞ってくれるのがありがたい。
「……昼休み、岩泉が、昨日のことを聞いてきた」
昨日のこと。
その単語に、少し、花巻が反応した。
「ありのままを話した。……んで、そのまま昼休みも終わるから帰ろう、ってなったとき。
私に向かって、こう言ったの。
"……俺じゃ、ダメか。"
これって、昨日あんたが答えなかった、岩泉に頼まれて花巻がOKした理由、と関係ある?」
気になった。
あんな表情見たあとじゃ、気にするなと言う方が無理でしょう。それに、悪い、なんて謝って、屋上から立ち去ってしまった。
もう、混乱ばかりで、頭がおかしくなる。
「……そんときの、岩泉の顔は」
花巻の低い声が、耳を掠める。
心地よい。でも、どこか緊張を含んだ声。
「私の勘違い、だったらヤバい奴だけどさ。
耳まで、真っ赤で、苦しそう、だった」
昨日の私に、よく似ていた。
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あいうえお - すみません他の作品のパスワード教えてほしいですー! (2023年2月18日 22時) (レス) id: 8655edc292 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - たまたま見つけたこの小説でしたが、読んでよかったなあと思いました。私も夢主ちゃんと同じ感じで何もないのに死にたいとかめっちゃ思います。だからこそ共感できるし、なんか同じ気持ちの子がいるんだなって嬉しくなりました。好きです! (2021年6月19日 6時) (レス) id: 85ad8c6978 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まーちさん» いえ!こちらこそ読んでいただき本当にありがとうございます!感動したと言っていただけて本当に嬉しいです。コメントまで残して頂き、励みになります!本当にありがとうございました! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
お水。(プロフ) - まふにゃさん» 歌詞だったんですね!気付きませんでした!今度検索してみますね!コメントありがとうございます! (2020年12月29日 18時) (レス) id: 5c541d7487 (このIDを非表示/違反報告)
まーち - こちらの作品とても感動しました。少し、少しだけ感情が薄い私がなきそうになりました。こんな素敵な作品を作っていただきありがとうございます。 (2020年12月10日 21時) (レス) id: 65334a4eed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:お水。 | 作成日時:2019年1月12日 17時