第4.26話 迷い・拒む者 ページ27
私は、フラヒドリの金色の目の目の奥に、ユージ君の顔の輪郭が
ぼやけて見えている事に気が付いた。
「ユージ君!」
結界の外へは声は繋がらないと分かっていながらも、私は叫んだ。
すると、金色の目の中のユージ君の顔が、ふっと揺らいだように見えた。
「ユージ君……私、Aだよ!」
ユージ君の顔が、徐々にはっきりとしてきた。
人形代の効力があらわれたのだ。
「ユージ君、出てきて……その魔物から出て。お願い……
このままでは、この妖怪に魂を乗っ取られ、永久に出てこれなくなるの!」
目の前がだんだんかすんできた。
「嫌だ! やっと友達が出来たんだ!」
「友達じゃない。本当の友達は、こんな事しない!
ユージ君を閉じ込めたりなんか……しない!」
「黙れ!」
こうやって喋っている間も、
絶え間なくフラヒドリは炎を吐き続ける。
「(もう……もう、駄目かもしれない……)」
そう思った時、スネリともっけの姿が、私の胸の奥に浮かんだ。
二人は自分の命を顧みずに、ユージ君を助けようとした。
……二人の思いは、私の迷いをふっ切る。
そして、最後の力を振り絞って、フラヒドリを湖の方へ押し出す。
じわり。
フラヒドリの体が傾き、湖に片脚をついた。
その瞬間、フラヒドリの周りで燃え上がっていた炎が、一瞬消えた。
フラヒドリは、湖に映った自らの姿を見て、
「きええええええええ!」
と叫んだ。
耳を劈くような泣き声に、私は頭を抱える。
「僕? これが僕なの?」
ユージ君の声がした。
私はその瞬間、身を守ってた結界と解き
フラヒドリの目の中に映るユージ君に向かって手を伸ばした。
「ユージ君、人間に戻ろう。今なら戻れるから……」
ユージ君はその手を取ろうとしない。迷っている。
フラヒドリの方は、魂の主を呼び戻そうと
羽を羽ばたいて大きな泣き声を発している。
フラヒドリが身もだえし
飛び立とうとした瞬間、その脚を掴む者がいた。
「ナミちゃん!」
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作者名:フェイル | 作成日時:2010年10月29日 17時