７話 ページ9
前半終了。
点差は動かず０対０だ。
「禁断の技が二つか…」
そう小さくつぶやく。
試合運びが難しくなったのはもちろんのこと、勝つことすらも危うい。
「ビーストファングも禁断の技なら、どうやってシュートを決めるの？」
「……それは…」
素朴な疑問に有くんが口籠る。
勝つことを優先とするか。それとも、仲間を傷つけないためにもここで終わるか。きっと、一番つらいのは有くんだ。
「ここで、試合を止めることは許さないわ。後半からは私の指示に従って頂戴」
そんな監督の言葉に、重々しい空気が場を占める。
監督の指示は的確で、吹雪くんがFWとして上がり、勝つためのプ方針としては最適解だった。
「有くん。そんな顔をしないで、私が佐久間くんにシュートを打たせないから」
「頼むぞ。それと、あのシュートをまともに受ければ、お前もただでは済まない。気をつけろ」
「私は大丈夫。あんな強さに負けたりはしない」
「ふ、頼もしいな」
小さく笑った有くんに、笑顔で返して守備位置へと動く。
吹雪くんが抜けた分、しっかりと守らなければ勝ちはない。
ピーと後半開始のホイッスルが鳴り、吹雪くんと染岡くんが攻める中で、見やるのは不動くんだ。
何が面白いのかずっと口元が笑っている彼には正直に言って、怒りしか湧いてこない。
そうしている間にも。
「ドラゴンクラッシュ！！」
染岡くんのシュートはゴールからコースが外れて吹雪くんへ。
不意を突いた攻撃に源田くんの行動が一歩遅れる。
「エターナルブリザード」
一点先取。
あの技を使わせずにとったこの得点はかなり価値が大きい。
しかし。
「グッ！」
ピーと笛が鳴らされて不動くんにイエローカード。
そして、足を抑えて苦痛の声をあげる染岡くん。
どこまでも、外道な。
「あの、やろ」
グッと握った握りこぶし。
染岡くんの元へ集まれば、プレーは無理だと秋ちゃんから告げられる。
「交代はなしだ。役に立たないかもしれねぇが、ピッチにおいてくれ！」
それでも、染岡くんは諦めずに円堂くんの肩をつかみながらも懇願する。
今後のことを考えても、今すぐ交代するべきだ。
「円堂くん。私が、FWで出る。染岡くんは試合に出るべきじゃない」
「お前は黙ってろ」
「ううん。お願い染岡くん。私にやらせて」
まだ、控えには塔子ちゃんがいる。
無理するときじゃない。
「……分かった」
「うん、ありがとう」
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作者名：ハル x他1人 | 作成日時：2019年5月7日 22時
